約 3,642,930 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2475.html
「「ゆっくりしていってね!」」 ハッキリと、大きな声が畑の近くで聞こえた。声のする方へ近づいてみるとそれは二体の生き物だった。 畑の脇の道にいた二体は人語を話してはいるがどうみても人間やオウムの類ではなかった。 二体に共通する特徴は、バスケットボールほどの大きさの饅頭であるということだろう。 饅頭が生物なのが矛盾しているが、そうとしか言いようのない形であり、また中身も餡子なのでこれが適切だと思う。 左の方の饅頭は、黒のとんがり帽子と長い金髪を持ち、右の方は赤を基調としたリボンを付けていた。 私たちは彼女たちの総称を便宜上、「ゆっくり種」と呼んでいる。由来は先ほどの挨拶だ。 そしてこの二体はそのゆっくりの中でもポピュラーな種類である。左が「まりさ」で右が「れいむ」だ。 自分たちでそう名乗っている以上そうなのだろう。 「やあこんにちは。ゆっくりしてるよ。君たちもゆっくりしてるかい?」 「「ゆっくりしてるよ!!!」」 元気そうに跳ねる二体。私は持ってきたチョコを彼らにプレゼントした。ゆっくりは総じて甘い物が大好きなのだ。 「「ゆー!ゆっくりたべるよ!・・・ゆっくりー!」」 嬉しそうに頬張る二体。するとどこからか別のゆっくりがやってきた。 「チーンポ!」 「とかいはなありすとゆっくりしていってね!!!」 「うー♪うー♪おやつー!」 チョコの匂いに釣られてやってきたのは、みょん、ありす、れみりゃの三体だった。 れみりゃは他のゆっくりと違い人の体に近い体格をしている。 周りに幽霊のような物が浮かんでいるのがみょん。金髪にカチューシャを付けているのがありすだ。 「君達の分もあるよ。はいどうぞ。」 そういって残っていたチョコを渡した。これ以上増えたら流石に足りなかったが増えなかったので安心した。 食後、彼女たちは近くの野原に移動して遊んでいた。 ありすは、花を千切って髪飾りを作っているようだ。細かい作業を口でこなせるのが不思議である。 みょんとまりさは斜面を転がったり登ったりしていた。生首が転がっているようで、結構不気味でもあるが 本人たちの顔は幸せそうである。 れいむはれみりゃに抱っこされながら空を飛んでいた。 「ゆー、おそらをとんでるみたいー!」と楽しそうにしていた。 近くの森には結構な数のゆっくりが居るようだが、たいして問題にはなっていなかった。 別に作物を荒らすわけでもなく、森の食べ物を食いつくこともなく、何故か野生動物にいっさい襲われない彼女たちを 無下に扱う村人はいなかった。 それどころか、彼女たちは畑の雑草を刈ったり、老人の話相手や子供たちと遊んでいたりと、友好的な関係を築いていた。 私も初めてみた時から彼女らの虜になっていた。語彙こそ少ないが、彼らは的確に自らの思いを口にし、 仲間同士で仲良くしている姿は愛らしい子供のようだった。 夕方すぎになり私も家に帰ることにした。 「「ゆっくりさようならだね!!!」」 れいむとまりさ達はそういって森へ帰って行った。私も夕食のメニューを考えながら帰路についた。 それが彼女たちとの最後の会話だとも知らずに。 夜の森、そのど真ん中でゆっくり達は寝ていた。数は数十匹ほどだろうか。 毛布代わりに葉っぱをかけているだけで全く無防備である。 だが彼女たちは他の生き物に襲われることはない。正確に言えば、見た目と違い襲ってくる野生動物を撃退できる程度の力を有しているからだ。 しかしそんな彼女たちにも魔の手が迫っていた。その手は彼女たちを掴むと、そのまま袋に入れていった。 そうして全員を入れ終えた後、その人影はどこかへ消え去っていった。 郊外にひっそりと建てられたとある施設。そこはとある会社の倉庫だった。 元々は別な目的で作られたようであるが、紆余曲折あって今はとある金持ちの所有物となっていた。 そこへ先ほどのゆっくり達が運ばれてきた。彼女たちは数ある倉庫の一つへ連れてこられると、そこへ無造作に放り込まれた。 流石に振動で目を覚ましたようで、彼女たちはキョロキョロと辺りを見回していた。 そこへ何人かの若者が入ってきた。 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 そう言ってその男たちはポヨンポヨンと近づくゆっくり達。男たちはそのうちの二体を掴みあげた。 「ゆ?ゆっくりもちあげられたよ!」 どうやら抱きかかえられたと思ったらしい。れいむは喜んでいた。 掴みあげた男は、れいむを観察するとそのまま床に叩きつけた。 ベチィ!っと床に叩きつけられたれいむは、何が起きたのかわからずただただ、泣き続けていた。 「ゆー!ゆっくりできないよ!ゆっくりいたむよ!」 「「「「ひどいことはゆっくりやめてね!!!」」」」 他のゆっくり達から抗議の大合唱を受けたが、特に気にせず男たちは話していた。 「饅頭のくせに潰れないのはおかしいだろ。常識的に考えて・・・」 「ていうかこいつら生き物なら、どうやって個体を増やしてるんだ?生殖器なんぞ見当たらないが」 「そもそも食った物はどこへ行ったんだ?」 「ていうか甘いものが好きなら、共食いしそうだぞ。饅頭だし。」 「とりあえず実験してみようぜ。なにせ数は多いんだ。気を使わなくて済む。」 男たちはそれぞれの実験のためにゆっくり達をそれぞれ連れて行った。 ある男はゆっくりの繁殖について実験していた。当初は分裂でもするかと思ったが流石にそれはないと判断した。 しかし体のどこにも繁殖に使われそうな物はなかった。仕方がないので体を無理やり触れさせてみた。 「いたいよ!ゆっくりやめてね!」 「ありすもいたいわ!ゆっくりやめてね!」 男の手でゴシゴシと二人はすり合わされていた。まりさの後ろからありすを押し続けていた。 かれこれ30分は経過した。一向に変化はない (やはり他の動物みたいな生殖器はないのか・・・隠れてる説も考えてみたが無駄だったようだな。) 男は諦めて次の実験をしようとした瞬間、突如、ありすから男性器に似た物が文字通り生えてきた。 「ゆー!なにこれ?わからないわ!」 まりさの方を見てみると何か穴が開いていた。どちらも先ほどまではなかったものだ。もしやと思い無理やりそこへねじ込んでみた。 「ゆー!ゆっくりできない!ゆっくりさせて!」 「ゆ!ゆ!・・・ゆっくりー!」 入れてすぐにありすは絶頂に達したようだ。 しかしそれだけで何も起きなかった。しかし男の眼は輝いていた。 (妊娠はしなかったが・・・生殖活動を行える事がわかっただけでも大きな進歩だ。次は妊娠の方法だな。) 男は今の出来事を記すためにパソコンに向かい合った。 別な男はゆっくりの食事について調べていた。基本雑食であるが、特に甘い物が大好きなのがゆっくりである。 ならば辛い物はどうなのだろうか。甘党な連中のことだ。辛さは苦手だろう。 ためしに一匹のちぇんにキムチを食べさせてみた。 「からいんだよーたべれないよー!」 予想通り苦手なようだ。しかし大した変化もなく、男はつまらなそうな顔をした。 (せめて辛さにのたうち回って死ぬとかしたら面白いのにな) そう思いながらもう一回キムチを食べさせてみた。すると 「からいよー!ゆっくりできないよー!たすけてー!」 そういって暴れ出した。手から落ちたちぇんがそのままのたうち回って死んでしまった。その顔はまるで窒息死でもしたかのような顔だった。 先ほどまではただ嫌がってただけなのに何故・・・考えてもわからないのでとりあえず別な実験をすることにした。 甘いもの好きなら共食いはするのだろうか。 手始めに適当なゆっくりをテーブルに置いた。まりさだった。 「ゆっくりしていってね!!!」 純粋無垢な目をこちらに向けていた。 俺はそのまりさをいったん放置して、近くのれみりゃを抱きかかえて椅子に戻った。 「う~♪だっこー!」 嬉しそうにこちらにひっつくれみりゃ。俺はそのれみりゃに対して 「お腹すいてる?甘いのでも食べる?」 と聞いた。すぐさま 「うー!たべるー!」と返事をしたので、れみりゃは床に下ろしてテーブルの上のまりさを持った。 「あーんして。ただし眼は瞑るんだよ。」 「うーーーーーん」 大きく口を開けたれみりゃの口の中にまりさを入れる。そして 「はいとじる。」 グシャっという音が響き渡った。どうやらまりさは即死のようだ。断末魔さえあげなかった。 「うー!おやつ・・・うー!まりさがくちにいるー!どうしてー?」 どうやら事態を把握できてないようだ。まあそれならそれでいい。 餡子の味を覚えたなら、おそらく他のゆっくりも遠慮なく食える気がする。いやまあ普通に考えれば仲間を自発的に食ったりはしないだろうが なのでこれは俺の希望にしかすぎないのだが。 「れみりゃ?饅頭はおいしかったかい?」 「うー!おいしかったー!」 「そうか。ならあそこにいる饅頭も食べていいよ。」 さあどうでる。多分食わないだろうが、個人的には食べた方が面白い。 「うー・・・・?」 迷っているのか、それとも何も考えてないのか。表情からはいまいち読み取れない。だが次の瞬間 「うー!おやつたべるー!」 近くにいたれいむを掴んでかじった。 「ゆっくりやめてねれみりゃ!ゆっくりできないから!」 れいむの訴えもむなしく食べられてしまった。 結局このゆっくり達はれみりゃに全員食べられてしまった。しかしなんでこいつらは逃げなかったのだろうか。 結局この倉庫では全滅するまで若者たちは思い思いの実験を楽しんだ。そのあとも若者たちは実験を繰り返し それらをブログ等で発表。たちまち話題となり、全員捕まった。森への不法侵入である。 そしてその発表がネットで広まると、ゆっくりに対して様々な情報が飛び交った ゆっくりは野生動物と同じくゴミ箱を荒らすだの ゆっくりの排泄物も餡子だの ゆっくりは植物のように繁殖するだの 車に似た物に乗って高速道路で100kmを出しただの。 優しそうに見えて実は口が悪いだの 根拠のない情報が飛び交った。しかしその情報は数日後に現実になった。 それから数年後、今はゆっくりは害獣の代名詞のような扱いだった。 畑を荒らし、ゴミ箱をあさり、他人の家にかってに住み込んでおうち宣言を行い あげく住人には暴言を吐く。なまじ知能と言葉を持ってるが故にそこいらの動物などとは 比べ物にならないほどタチが悪かった。 私はそんな状況を哀しんでいた。どうしてゆっくりはこうなったのか。ふと一軒家を覗いてみると、そこにはれいむとまりさ そしてその子供たちが数体居た。彼らは住人であろう男に向かって 「ここはれいむたちのおうちだよ!ゆっくりできないおにーさんはでていってね!!!」 「おやつをもってくるならいるのをゆるしてあげるんだぜ!!!」 男はため息をつくと、傍に居た犬の首輪をはずした。 「食べていいぞ。」 すぐさま犬はゆっくり達に襲いかかった。まずはまりさの帽子が奪われた。 「なにするんだぜ!ゆっくりできないばかいぬはとっといぎゃああああああああああ!!!」 頭から噛まれたまりさは、そのまま二三回地面に叩きつけられた。金髪の髪が餡子で汚れていた。 「やべるんだぜぐぞいぬ!!!!ぐぞじじい゛ぼびでないでどっどどだづげろ゛お゛お゛お゛!!!」 「まりさ!しっかりしてね!いまたすけるよ!」 「おとーしゃんいまたちゅけるよ!」 他の家族が必死に犬へ体当たりをする。しかし効果は全くない。 そうこうしてるうちに子供まりさの一匹が「そろーり、そろーり」と言いながら庭から出て行こうとしていた。 しかしそれに気付いた親れいむが止めようとする。 「どうじでがぞぐをみづででに゛げよ゛う゛どじでるのお゛お゛お゛!!!」 「うるちゃいんだぜ!まぬけなおとーさんがわるいんだぜ!」 そういって逃げようとしたまりさ。しかし何者かに上から押さえつけられてそれは失敗に終わった。 「ゆ?・・・れ、れみりゃだああああああああああ!!!!ばりざはおいじくないィ!」 命乞いをする暇もなく、半分にされたまりさ。それを美味しそうに食べるれみりゃ。 口の周りを汚しながら 「う~♪あまあまおいしいどぉ~♪おぜうさまにはえれがんとなちょうしょくがひつようだどぉ~♪」 そう言いながら次々とゆっくりを食していった。 「でびりゃはゆっぐじできないいいいいいい!!!!」 「ばりざをだづげるんだぜええええ!!!!」 「でいぶをゆっぐじざぜないおぎゃーじゃんだぢはじねええええええええ!!!!」 別のところでは学校の花壇の花を食している家族が居た 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」 「ときゃいはおはなさんね!ありちゅがゆっきゅりたべちゃあげるわ!」 そこへ学生達が近づいた。 「ヒャッハー!虐待だー!」 そのあとは見てない。 今ではよく見られる光景であった。 私はとある大学へ来た。そこには世界でも有名なゆっくり研究の第一人者がいる。彼の発見とやらを取材しに来たのだ。 研究室へ入ると初老の男が出迎えてくれた。 挨拶もそこそこに、私は今回の発見を聞くことにした。大学時代の恩師の友人である彼は、未だ発表されてない発見を 私だけに教えてくれるそうだ。しばらくは記事にしないという条件だが。 「これを見て下さい。」 男が指をさした方には、二つのケースがあった。そこには二体のれいむがそれぞれ入れられていた。 「右は野生のゆっくりを捕まえたものです。左は研究所で外には一切触れずに育てたものです。左と会話してみてください。」 右のれいむはこちらに気づくと 「ゆ!れいむはおなかすいたよ!ばかなじじいはとっととごはんをもってきてね!!!」 と言ってきた。対して左はと言うと。 「ゆっくりしていってね!!!」 今では滅多に聞けない、あの挨拶をしてきた。だがそれだけである。 「しかしこれが何か?挨拶だけなら、ブリーダーの育てたゆっくりなら・・・」 「では、ちょっと中身を見てみましょうか。」 そういって教授は左のれいむの顔を少し引きちぎった。」 「ゆ!はかったねおじーさん!」などと言いながら引きちぎられたれいむ。私は餡子が漏れるとばかり思っていたが 傷口からは何も起きなかった。 「よく見てください。」 私は傷口をみた。そこには餡子はおろか何もなかった。ただ白いだけだった。 なんだこれは?全く訳がわからない。どうして餡子がないのだ。 「隣へいきましょう。」 そういって教授は左のれいむだけをケースから取り出し。隣の部屋へ向かって言った。 右のれいむは「はやくここからだせ!ださないとれいむがゆっくりできなくさせるよ!!!」と言っていた。 そこは今まで見たこともないゆっくりだらけだった。 いやれいむやまりさは見たことがある。 しかし私の知っている彼女たちではなかった。 まりさは滑るように移動しながら院生に餃子を無理やり食べさせていた。れいむはひたすら何かを運んでいた。 れみりゃは「うー!」と言いながら手から何やら不思議な弾を出し、きめえ丸はもはやなんだかわからない生き物になっていた。 「どうですか?ついでにあのまりさとれいむは銃弾でもビクともしませんよ」」 「どうですかと言われても・・・このゆっくり達は一体?」 「元は野生の赤ゆっくりでしたよみんな。育て方も普通の育て方をしたまでです。ただしちょっとした事をしましたが」 「ちょっとした事?」 「正確には思っただけですね。たとえばあのれいむ。世話をする人間は、あのれいむと接する時必ず、『これは理解不能の不思議生物だ』 と思いながら接するように命じました。」 「思う・・・ってホントに思っただけですか?」 思わず聞き返した。 「ええ。そうやって何回か試したうちに一つわかりました。・・・おそらくゆっくりは人間の望みどおりに変化するのではないかと。」 「へ・・・変化ですか?」 「例えば、『このれいむは1m上から落ちただけで死ぬ』と思いながら育てるとしましょう。世間一般で普通と言われているれいむならば 1mからでは死にません。しかしそう思いながら育てていったれいむは、本当に1m上から落とされただけで死ぬんですよ。 これなら、未だにゆっくりの生態に関する情報が乱立してる事も説明がつきます。人の『こうなってほしい』という思いに 影響を受けるのならば、一人一人違うゆっくりが生まれるのですから。口の悪くて脆弱なゆっくりも、礼儀正しいゆっくりも その人しだいということでしょう。」 教授の言ってることは最早あらゆる法則から外れていた。しかしそう言われるとそうかも知れない。 「今の世間の一般認識はゆっくり=害獣という認識が強いです。おそらくそれによって大多数のゆっくりがあのようなのになったのでしょう。 思い込みしだいでは饅頭ですらなくなると言うのに。」 ふと数年前の記憶が蘇った。あの頃の私はゆっくりが饅頭であり、生物であり、甘い物が大好きだと思っていた。 いや、思っていたからこそそうなったのか。 「ここに来た記念にこれを差し上げましょう。」 帰り際、そういって教授から箱を手渡された。中を覗いてみると、小さなれいむとまりさが眠っていた。 スヤスヤと寝息を立てている姿は可愛らしかった。 「貴方も体験してみるといい。彼女たちがどういう風になるかは、貴方しだいなのですから。」 そういって教授は研究室へ戻っていった。 私は箱を見ながら、あの野原の事を思い出した。 ふと、二人が目を覚ましたのがわかった。私はこういった。 「ゆっくりしていってね!!!」 【あとがき】 色々とアレな設定ですが。まあ適当に読んでください byバスケの人 過去作 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!3 お兄さんとドスれいむ 鬼意屋敷殺人事件 どすの加工所 幻想樹の迷宮 幻想樹の迷宮Ⅱ 徹夜でゆっくりしようぜ! 徹夜でゆっくりしようぜ!2 地震 ゆーうーかい ゆーうーかい 解決編 ゆーうーかい番外編 ~ゆっくりプレイス~ ゆっくりパニック れみりゃをむーしゃむしゃー 帽子のないれみりゃ ゆっくりプレイスを求めて 水上レース このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/432.html
ゆっくりまりさが目を覚ますと、そこは木屑が敷かれた透明な箱の中であった。 箱の外は今までいた部屋が見える。自分たちが暴れ散らかっていたはずなのに、きれいに片付いていた。 体が何かに固定させられているのだろうか、バレーボール程の大きさであるまりさはその場から動けないでいた。 「まりさをゆっくりさせてね!!」 返事は返ってこなかった。仲間たちはどうしたのだろうか。 まりさは眠る前のことを思い出そうとしていた。 幻想郷は少しずつ寒さを感じさせる季節となっていた。 木々の葉が地に積もり、冷たい北風が幻想郷に吹き始めた。 ゆっくりまりさは、群れのリーダーとして引越しを決意した。 現在住んでいる洞窟は当初、以前の住人たちが貯えた食料があり、広さも申し分がなかった。 しかし順調にその数を増やし、成長し続けたゆっくりたちにはその蓄えは少なく、住居は狭く感じられた。 その数およそ40匹。 ゆっくりまりさとゆっくりれいむで構成された群れである。 「みんなでお引越しするよ!!」 「おひっこち! おひっこち!」 「ゆっくりれいむは、まいるーむがほしいよ!!」 「ゆゆゆ! ごはんをたくさん食べたいよ!!」 恋人や仲間、子供たちを率いてまりさは、新しい住居を探す旅に出ることを決意した。 今までの引越しはどれも成功しており、まりさには自信があった。 「きょうからここがまりさたちのおうちだよ!!」 道中、木々の根元や他のゆっくりの家を一時的なおうちにしながら、遂に雨風をものともしない新しい住まいに辿り着いた。 僅かに開いた隙間から中に入り込み、そこでまりさ達は歓声をあげた。 そこには今までに食べたことのないお菓子や食事が豊富にあり、見たこともない様々なものがあった。 何より、とても広く清潔な場所であった。 まりさはこの場所を今までで最高のゆっくりホームに感じられた。 そこは人間にとっても広く感じられる、板張りの居間であった。 まりさたちは洋風の家屋に忍び込んだのであった。 「ゆー! ここならゆっくりできるね!!」 「きょうからここは、まりさたちのおうちだね!!」 「あたたかいね! ぜんぜん寒くないよ!!」 「むこうからいいにおいもするよ!!」 ゆっくりたちは思い思いにゆっくりし始めた。 「うっめ! はっふはっふ! これめっさうめっ!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 食事にありつくもの。 「おねえちゃんの絵をかいてあげるよ!」 「この中にお水が入ってるみたいだよ! 倒してみよう!」 筆や花瓶で遊びだすもの。 「んほおおおおおお! ゆ゙ゔゔゔゔんふぅぅぅぅ!」 「れ゙、れ゙いむ゙ぅぅぅぅんふぅう!」 発情しだすもの。 しかしある時全てのゆっくりが動きを止めた。 怒声が響いたためだ。 「ここはおにーさんとありすたちのおうちだよ!! ゆっくり出てってね!!」 まりさたちは声のした方向を振り向いた。 そこにはリーダーであるゆっくりまりさより少し小さなゆっくりありすがいた。 その影にはありすの子供だろうか、小さなありす5匹が隠れていた。 「ちがうよ! きょうからここはまりさたちのおうちになったんだよ!!」 「そうだよ! ぶがいしゃのありすたちはこのぷれいすから出ていってね!!」 「ゆっ、ばかなの!? あんこくさってるの!?」 一斉にまりさたちが喚きだす。 しかしありすは引き下がらない。 「もう一度だけ言ってあげるね! ここはおにーさんとありすたちのおうちだよ! ゆっくり出ていってね!」 そう叫ぶありすに、リーダーであるまりさは群れにも聞こえるよう言い放った。 「……おばかなありすは、ゆっくりしんでね!」 その途端、四方八方からまりさやれいむがありすに飛び掛っていった。 今までまりさたちは、住居と決めた場所にゆっくりがいた場合はこれを排除して群れを拡大してきた。 ここに辿り着くまでも、多くの住居とその蓄え、そして生活していたゆっくりの中身を喰らってきたのだ。 この集団は他のゆっくりにとっては強盗や猛獣の集まりと言えた。 「おかぁしゃん、こぁいよぉ……!」 「ゆゆっ! こ、こどもたちは逃げてね!!」 ありすは子供たちを逃がし、庇いながら自身の体に力を込め、弾丸のようにゆっくりたちに体当たりをしていった。 持ち前の気性か飼い主が鍛えていたためか、複数を相手にしてもまったく怯まない戦いをしていた。 しかし、子供に気遣いながらの一対多数の戦いの結果は日の目を見るより明らかであった。 「ゆ゙ゆ゙ゆ゙ぐ゙ゆ゙ぅ……、ありすとこどもたちをゆっくり放してね!!」 決着は早々についた。まりさは満足そうにありす達を見下ろした。 何匹かに押さえられ身動きが出来なくなったありすと、同じくありすの目の前で押さえ込まれている子供たち。 「お゙があ゙あ゙しゃぁぁん!! い゙だい゙よ! こわ゙いよぉ!!」 子供たちが口々に叫びだす。 「ありすはどうなってもいいから、こどもたちは助けてね!!」 ありすは子供たちのために嘆願をし始めた。 「ねーねー、まりさ! ゆるしてあげるのだめかな♪」 一匹のゆっくりれいむが、ありすを見下しながらリーダーであるまりさに尋ねる。まりさの恋人なのだろう。 ありすの子供たちを眺めながら、まりさは答えた。 「だめだよ♪」 そしてありすの子供である一匹に近づき、おもむろにその体に噛り付いた。 「や゙め゙でえ゛ぇ! い゙だい゙よ゙お゙おぉ!!」 「どうじでありずのごども゙にぞん゙な゙ごどずる゙の゙お゙お゙むぎゅ……!!」 悲鳴をあげる仔ゆっくりと絶叫しだすありす。後者は口を塞がれた。 まりさは齧った箇所からクリームを汚い音を立てながら吸いだしていく。 「ぢゅるぅ…ぢゅぢゅっぷ…うっめ! このありすのクリームめっちゃうめ!!」 「ずわ゙な゙い゙でぇぇぇ!! あ゙り゙ずのながみずわ゙な゙い゙でぅぅ……」 「んー……! んむむむむー!!」 「おねえぢゃああん!! おね゙え゙ぢゃんを吸わないでえぇ!」 中身を吸われ、声を出すことがままならなくなる仔ありす。 ソフトボール程の大きさであった体がみるみる萎んでいく。 目の前の光景にありすは塞がれた口からうめき声をあげる。 吸われる姉を見て恐慌に陥るありす姉妹。 「ゆゆっ! れいむもありすを食べたいよ!!」「ゆっくり食べさせてね!!」「はっふはっふしたいよー!!」 「まりさも食べたいよ!!」「さいきんありす食べてないよー!!」「ぱちゅりーよりおいしいよね!」 「おかあさんだけずるいよ!!」「ゆっくり食べたいよ!!」「ゆっくり食べたいよ!!」 他のまりさやれいむ達が口々にありすを要求しだす。 これを見てリーダーまりさは皮だけとなった仔ありすを齧りながら言った。 「みんなで仲良く食べようね!!」 まりさ達の群れが他のゆっくりの巣を襲った時には毎回行われるイベントであった。 食べ物を要求する仲間と、それに応えるまりさ。 このゆっくりたちは恐怖でゆっくりの中身が旨くなることを知っていた。 それからはありすにとって地獄であった。 彼女の目の前で子供たちが少しずつ少しずつ喰われ、吸われ、削られていった。 「おがああじゃあああ!! いだい゙い゙い゙い゙いイィィィ!!」 「だじゅっ、げでっ、おがあしゃん! おがあ゙しゃん゙ぅぅ!!」 「だべないでぇぇ!! あ゙り゙ずをだべな゙い゙でぇぇぇ!!」 「どぼじでええ! おがあ゙しゃんたすけでぐれないのおぉぼ!!」 ありすはジタバタと自分を押さえ込んでいるゆっくりを振りほどこうとするが、背中を大きく齧られて動けなくなった。 調子に乗った他のゆっくりも、ありすの右側の眼球をえぐり、髪を引っこ抜いた。 「ん゙ー! む゙む゙ぐ! む゙ぐぅぅうう……!!」 絶命していく子供たちに何もできないことに、ありすは自身の無力さを呪った。 片目に涙を貯めながら自分を睨み付けるありすを眺めながら、まりさは順番に仔ありすたちにありつく仲間たちの嬌声を聞いていた。 何度も体を動かそうとしながら、まりさは思い出していた。 そうだ、ありすたちをいじめていたのだ。 それから一体何があったのだろう。どうしても思い出せない。 若干箱の壁に反射する自分の姿を見て、まりさは帽子ごと頭頂部からベルトで床に固定されていることを理解した。 しばらくして、背中側から足音が聞こえた。まりさのいる箱の方に向かってきた。 恐らく人間なのだろう。まりさの背中に何か呟くと、ようやく目の前に姿を現した。 「やあ、まりさ! ゆっくりしてるかい!」 若い男が手をあげて挨拶してきた。 ここはまりさたちのおうちなのに、どうしてこんな人間がいるのだろうか。 「ゆっ! おにいさんは誰なの!? ここはまりさたちのおうちだからゆっくり出ていってね!!」 「つれないことを言うなよ、まりさ! 動けないお前のために仲間たちを連れてきてやったのに」 そういって男は「よっこいしょ!」と大きな透明な箱を5つ、まりさの前に置いた。 どれもその中には仲間たちが入っていた。分けられて入れられているようだ。 箱の中のゆっくりたちは、このまりさに気付かない。何か特別な細工がされている箱なのだろう。 「ゆっ! どうしてまりさたちを箱の中に入れてるの! ゆっくり出してあげてね!!」 声は聞こえるのだろうか。他のゆっくりたちが「おかあしゃんのこえだ!」や「まりさが生きてた!」と喜びの声をあげる。 「いいかい、まりさ。これは都会派なら誰もが知るゆっくりVIPルームなんだよ! 特別にカワイイ君達を招待してあげたんだよ!」 言いながら男は何かを仲間たちのいる箱の中にバラバラと撒き始めた。どうやら食事らしい。 「ハフハッフ…うっめ! これめっちゃうめ!」「しあわせー♪」とそれを食べたゆっくりたちが騒ぎ出す。 男の言うことは本当かもしれない。これに気を許したまりさは自分にも食事を要求した。 「おにいさん! まりさにもおいしいものをちょうだいね!!」 男は5つの箱に餌を撒き終えてから、まりさのいる箱の前にやってきた。 動けないまりさの口元にお菓子を与えてやりながら、男はまりさに尋ねた。 ねぇ、まりさ? ここにいたありす達はどうしたのかな? と。 「ハフ…クッチャ…ここにいたありすたちは、生意気だからゆっくりころしてあげたよ!!」 男はまりさの言葉に頷きながら、質問を返した。 「子供たちがいたでしょ? あの子たちはどうやって殺したの?」 まりさは口いっぱいにお菓子を頬張りながら答える。 「ハッフクチャァ…あのね゙、まりさたちで少しずつ…ッング…齧ったり吸ったりしながらころしてあげたよ!!」 素直にまりさは答える。少し誇らしげな様子だ。 そしてまりさも質問を返した。 「ゆ! おにいさん、どうしてまりさは動けないの? ありすたちをいじめてたはずなのに?」 男は笑顔でこの質問に答えた。 「君達がそのありすをいじめてた時に、どうやら複数のれみりゃがやってきたらしくてね。 不意打ちをかけてみんなを気絶させてしまったようなんだよ。もちろん僕が追っ払ってあげたけどね」 ニコニコとまりさの背中をさすりながら続ける男。 「特に君はケガをしてしまったようだから、特別個室を用意して看病してあげているんだよ」 まりさは納得したのか、嬉しそうに男に言った。 「ありがとう、おにいさん! おにいさんは特別にまりさたちのおうちでゆっくりしてもいいよ!!」 無意識に跳ねようとしたためか、まりさはケガをしたという背中に一瞬痛みを感じた。 その背中をさすりながら、にこやかに男は言う。 「そうだね、まりさ。君達とゆっくりさせてもらうよ!」 それからまりさたちは男と暮らし始め、数日経った。 男は仲間たちに食事を与え、順番に箱から部屋に出しては遊ばせたり風呂に入れたりと世話をしてくれた。 まりさには怪我をしているからと、初めて会話をした日以外は砂糖水しか飲ませず、箱から出すこともなかったが不満を漏らさなかった。 男は存分に自分たちをゆっくりさせてくれているからだ。 「春までには箱から出れるよ」と、男は背中をさすりながら語りかけた。 実際、まりさは時間が経つにつれて、背中に違和感を感じることが多くなってきた。 自身の体に何が起こったのだろうかと一瞬不安になるが、ここでゆっくりすれば治るだろうとまりさは考えた。 「……ゆっくりうごけなく…なっていってね」 その日の夜、まりさは背後から何か聞こえたような気がしたが、そのまま眠りについた。 ある日、まりさは男を呼び止めて言った。 「おにいさん! まりさもみんなとお話したいよ!」 まりさは個室に入れられているため、自分の仲間や娘たちと会話をすることができないでいた。 「よし、あのれいむを箱の中に入れてあげるね!」 男が指さしたゆっくりは、自分の娘の一人であるゆっくりれいむだった。 「うん、おにいさん! ゆっくり急いでまりさのところに運んでね!!」 男はまりさの目の前にれいむを置いてやった。ソフトボール程の大きさのゆっくりだった。 「ゆゆ、れいむ、おかあさんの部屋でゆっくりしていってね!!」 「ゆー♪ おかあさんだ! ゆっくりできるよ!!」 久しぶりの親子の会話を弾ませる二匹。男はまりさの背中をさすりながらそれを眺めていた。 それから数分経って、男は仔れいむを持ち上げながらまりさに言った。 「どうだい? 満足したかい、まりさ! 明日から仲間たちを連れてきてあげるね!!」 それはまりさにとって嬉しい提案であった。 「うん、おにいさん! 明日もお願いね!」 仔れいむは「うわあ、おそらをとんでるみたい!」と、男と親であるまりさの会話を聞いていなかった。 男はまりさのいる箱から少し離れると、そのゆっくりの口にホチキスで小さな針を打ちつけた。 「んむむ! んむー!」と唸るゆっくりの頬の部分に今度は穴を開けた。 まりさに見られないよう、その背中に仔ゆっくりの穴が開いた部分を押し付けた。 「ゆゆ? おにいさん背中がけいれんするよ!」とまりさは自身の背後で行われていることに気付かずに声をあげる。 「痙攣しているのが見えたからまりさのために戻ってきて、背中をゆっくりマッサージしてあげているんだよ!」 まりさはそれに納得した。男が背中に何かを当ててから震えが止まったからだ。 男はまりさに「ゆっくりしていってね!!」と言い残すと、空いた両手で腕を組み、ゆっくり達のいる居間から出て行くと、自分とゆっくりたちの食事を鼻歌交じりに作り始めた。 その日の夜もまりさは、眠りにつきながら自分の背後で何かが囁く声を聞いたような気がした。 それから毎日、まりさの元に男は子供を運んできた。 砂糖水しか口に含めないことや、動けないことに不満はあったが、まりさは子供の会話や、背中のマッサージを喜んだ。 「おにいさんなら、ずっとまりさたちのいえに住んでいていいよ!!」 子供たちと話をするようになってから10日ほど経ったある日、まりさはふと気付いた。 目の前にあるゆっくりの仲間たちがいる5つの箱、その中にいるゆっくりの数が減っていることに。 それだけではない。うっすらと反射する自分を写す透明の箱の壁が、自身の背中が肥大していることをまりさに見せ付けた。 砂糖水しか飲んでいないのに、何故ここまで大きくなったのだろうか。 背中の痙攣も最近は頻繁に、そして強くなっていくことにまりさは恐怖を覚えた。 「ゆゆっ、おにいさん! まりさの子供たちが少なくなってるよ! それに背中も膨らんじゃってるよ!!」 まりさは子供との会話を終え、背中のマッサージを受けているときに切り出した。 「おにいさん! 今お話ししたれいむを連れてきてね!!」 まりさはうっすらと気付いていた。自分と話をしたゆっくりたちが消えているのではないかと。 男は顎に手をやりながらふむ、と唸ると「そろそろいいか」と呟き、まりさに答えた。 「それじゃあベルトを外してやるから、後ろを振り向いてごらん」 まりさを床に固定していたベルトが外される。 「君の後ろにみんないるから」 久しぶりに動くためか、背中が膨れてしまったためか、中々重たく感じる体をひねり、それを見た。 皮だけとなりペラペラとなったゆっくりたちが積み重なっていた。 どれも口は閉じられており、虚ろな目をしてこちらを覗き込むような顔をしていた。 一番上には、今さっきまで会話を交わした子供がペッタリとこの山にへばりついていた。 「ゆぅうぅううう!? どお゙じでみんな動かないのおおお!!」 まりさは目の前の状況が理解出来ず叫ぶ。 その声に他のゆっくりたちが反応するが、箱の中からではまりさの様子が伺えないため、不安そうな表情を見せた。 「それはね、まりさ! みんな君のマッサージのために中の餡子を提供してくれたから薄っぺらになっちゃったんだよ!」 男は手を大きく広げながらまりさに答える。 「ま゙り゙ざにもわがるようにおじえでね!!」 まりさは全く理解出来ずにいた。どうして、マッサージで子供のゆっくりたちがこのような姿にならなければいけないのか。 「それはね! 君の背中がこのゆっくりの中身を吸ってしまったんだよ! 10日ほど前からやってたじゃないか」 「言ってることがわからないよ! ゆっくりこの子たちをいきかえらせぶぎゅるぅ!!」 男はいきなりまりさを掴みあげると、その口をホチキスで塞いだ。 「ありす、痛かったかい?」と男は手の上に乗せたまりさに囁いた。 「まりさはありすじゃないよ!」と口にしたかったが、声に出せないまりさ。 しかし、信じられないことに自分の背中から声が聞こえてきた。 「大丈夫だよ、おにいさん! 我慢できるよ!!」 それにほっとしたような表情を見せ、男はしゃべりかけた。 「どうだい、ありす。体は動かせるか?」 それに背中の何かが返した。 「もう少しれいむやまりさを食べたら動かせそうだよ!」 まりさは愕然とした。自分の背中にいる何かが、子供達の中身を吸い出してしまったのだ。 男はそれを聞くと、箱の中にまりさを戻し、ベルトを締めなおした。 「そうだ、ありす! まりさに自分がどういった状況になっているかを見せてあげよう!」 「そうだね! ゆっくり見せてあげようね!!」 男は小型の背面鏡をまりさに見せた。 肥大化している背中に何が起きているのか。帽子を外され、その鏡を覗き込む。 まりさの後ろ髪が短く切りそろえられたそこには、ゆっくりありすの顔が貼りついていた。 まりさは声にならない悲鳴をあげた。 まりさ達がありす達をリンチし始めてから数十分後に男は家に帰ってきた。 それからすぐに、ゆっくり達が部屋を荒らしているのを察知し、ゆっくり用の薬品を撒いた。ゆっくりを睡眠に誘うガスである。 男は農学を研究する学者だ。、ゆっくりを研究する人間との付き合いもあり、こういったものを豊富に持っていた。 男は瀕死のありすを急いで回収したが、後背部の皮が大部分が失われており、瀕死の状態であった。 中のクレームが残された部分から乖離してしまったら、このありすは死んでしまう。 そこで男は大きなまりさに目をつけ、その背中の皮を切除し、餡子を多めに削り取ってからありすの前半分をつなげた。 見事につながった後、男はまりさには最低限の食事しか与えず、ありすには栄養のある食事や仔ゆっくりを食べさせていた。 するとありすの部分は大きくなり、体の支配権を握るようになっていった。 このままいけば、まりさという瘤のついたゆっくりありすになるのだろう。 その日の夜、背中にいるありすはまりさに語りかけ続けた。 「今までまりさにわからないように、夜中はおにいさんとお話ししてたの」 「お昼のまりさ、おいしかったな。でもありすはれいむの方があじがさっぱりしていて好きだわ」 「まりさったらすぐ近くで子供が食べられているのに気がつかないんだもの。ゆっくりしてるわね」 「ペラペラの子供たちを見ながら次のゆっくりが来るのを、まりさが楽しそうにお話してるのを聞きながら待ってたりするのは最高だったよ!」 「まりさ、起きてる? ……わかるわよ、つながってるんだから。寝たふりはやめてね!」 「右目はまりさの元気なあかちゃんからもらったら治ったよ! ありがとう!!」 「まりさの赤ちゃん美味しかったよ! また食べさせてね!」 「……明日もまりさの子供食べるけど、ゆっくりしていってね!!」 次の日、まりさはベルトを外され、違う部屋に連れて行かれた。 男の腕の中から、その部屋にはまだプチトマト程の子供たちが5匹ほど遊んでいることをまりさは理解した。 子供たちを男は呼び止めると、まりさを床の上に置いた。 「今からみんなには、おかあさんと鬼ごっこをして遊んでもらうよ!」 すると嬉しそうに子供たちは跳ね回った。 「おかあさんに会いたかったよ!」「ゆっくりあそびたいよ!」と、無邪気に喜んでいる。 「おかあさん、お口がふさがれてるよ?」「背中が腫れてるよ、だいじょうぶ?」と声をかけるものもいたが、「大丈夫だよ!」というまりさの方から聞こえる声を聞いて安心したようであった。 まりさは泣きそうな顔をしていたが、どのゆっくりも「大丈夫! ゆっくりあそぼうね!」の声を聞いて気にしないようになった。 「それじゃあ鬼ごっこを始めるよ!」と男は言う。 無邪気に部屋を跳ね回り始める仔ゆっくりたち。 男はそっとまりさに囁く。 「リハビリを兼ねた昼食だよ、ありす。頑張ってね!」 いや、もう男にとってはありすなのだ。 ありすはクルリと振り向くと、仔ゆっくりたちに対峙した。 「ゆっくり食べさせてもらうね!!」 母親の背中にあるもう一つの顔を見て、怯え始める仔ゆっくりたち。 「ゆゆ!? おかあさんのせなかにかおがあるよ!!」 「こわいよ! ゆっくりできないよ!」 「やめてね! ゆっくりちかよらないでね!」 それから一斉に、部屋の隅へと逃げ出す。ただ1匹だけ立ち竦んで動けないようだ。 「ゆ゙ゆ゙…ゆ゙っぐぐゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙!(ゆっくり止めてね)」というまりさの声を聞かず、ありすはその仔ゆっくりに齧りついた。 「い゙だい゙よ゙おがああざああん!! ゆっぐりでぎないよおお!!」 まりさは子供たちの絶叫、そしてそれを咀嚼する音を聞きながら涙を流すしかなかった。 まりさの恋人であり、妻であるれいむは、最近少しずつ減っていく子供たちが心配でしょうがなかった。 男が言うには、大きくなったから別の部屋に移したそうだ。 れいむは男が優しく頼りになる人間と信じていたため、それを疑うことは少なかった。 それでも、恋人のまりさの声もだいぶ前に箱の外から聞いたきりで、れいむには不安が募っていった。 春の訪れが部屋の窓から見えるようになる頃、 遂に子供たちは一人もいなくなった。 れいむは男に尋ねた。 「おにいさん! こどもたちかまりさに会わせてね!!」 男はれいむを抱きかかえ、小さく揺さぶりながら言った。 「実はまりさと子供たちはれいむに内緒でこの家から出て行ってしまったんだ。 窓の外にいたゆっくりぱちゅりーを好きになったみたいだね。 この帽子を別れの手向けれいむに渡してね、ってまりさが言ってたよ」 男はれいむに、まりさの帽子を渡して見せた。 それはまぎれもなくまりさの匂いがついた帽子であった。死臭はしないので、男が死体から剥ぎ取ったということはないのだろう。 「……ゆ゙ゆ゙ぐぐぅ、ま゙り゙ざのばがぁ!!」 悔し涙を流しながら、れいむは帽子を咥えて震えだす。 「よしよし、れいむ。泣かないでこの部屋でゆっくりしていってね!」 男は腕の中で振動を強めていく。少しずつ表情が緩んでいくれいむ。 まりさのいた箱の中に近づく男とれいむ。 そこには1匹のゆっくりありすがいた。 れいむをその箱の中に入れると、電動のマッサージ機でさらにれいむに振動を与える。 「ゆ゙ゆ゙っんほほほ! れれれれれいむだよ! よよよよろしくねありすすすすんほおおお!!」 れいむはこの振動で発情してしまったようだ。 そのれいむにありすが近づき、頬ずりをしながら答える。 「よろしくね、れいむ! きょうからゆっくりしようね!!」 2匹は交尾を始めた。 それからしばらく2匹はその箱の中で過ごし、れいむの体から茎が伸びてきた。 ありすとの子供である。5つほど実がなっていた。 れいむはこのありすのことを気に入っていた。まりさと比べ優しく、思いやりがあり幾分か知的であったからだ。 これからはありすとその子供たちと暮らすのも悪くはない。 ありすに頬ずりをしようとすると、ありすの背中に顔のような腫れ物ができているのが見えた。 「ゆっ! ありすの背中のはれもの、齧ってとってあげようか?」 ありすはれいむに向きなおってから、れいむに言った。 「ゆっ、大丈夫だよ! それより前の恋人とありす、どちらが素敵?」 「も、もちろんありすだよ! ありすの方がゆっくりできるよ!」 「ゆゆ! うれしいよ、れいむ! ずっとゆっくりしようね!!」 男はその会話を眺めながら考えていた。 ありすの背中のまりさは、全ての子供たちが自分の体に喰われてからは発狂したような素振りを続けていた。 しかし恋人が間近で寝取られてから反応を示さなくなっていった。 その心は果たしてまだ生きているのだろうか。 子供を産み終えたれいむを、ありすが食い殺した後にまりさがどんな表情を見せるか。 男とありすの復讐は、桜の花が散る頃には終わるだろう。 おしまい このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2994.html
注意書き 多分ぬるいです 初SSです 無駄に長いです 生き残るゆっくりがいます お楽しみいただければ幸いです。 『ゆっくりコールドスリープ』 すっかり山も赤く染まったある秋の日のこと、茂みの中でゆっくりれいむがが目覚めた 「・・・ゆぅ、ここどこ?」 寝ぼけ眼で辺りを見渡すれいむ、その大きさは成体までもう少しというところ。つまりは子れいむと呼ばれる大きさであった。 子れいむは見覚えのない風景に不安になり声を出してみることにした。 「おかーさーん!いもうとたちーれいむはここだよー!!」 「まりさー!ありすー!ぱちゅりー!かわいいれいむはここだよー!」 誰の返事もない 「どぼじでだれもへんじじでぐでないのぉぉぉぉぉ!!」 ついには泣き出すれいむであったがそれも無駄だと悟ったのか餡子脳で何故自分がここにいるのかを必死に思い出すことにした。 (ゆぅ・・・れいむはたしかごはんをたべてからまりさとでかけて・・・ひろばでゆっくりしていて・・・きづいたらにんげんさんが・・・) 「ゆゆ!!そうだよ!!れいむとまりさはにんげんさんにつかまっちゃったんだよ!!」 十分ほどかかりどうやら思い出してきた様子のれいむ。 そうだ、自分はまりさと人間の家に連れてこられたのだった。 そして・・・ 「ゆぎゃぁああああああああああ!!おもいだじだあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」 すべてを思い出したれいむ。 人間の家は地獄のようだった。 このれいむとまりさを捕まえた人間の男はたいそうな甘いもの好きでちょくちょく森に入ってはゆっくりを捕まえ調理し食してきた。 男にとってはゆっくりとはしゃべる饅頭であり虐待などの趣味は持ち合わせてはいなかった。 調理法によってはいろんな道具を使い形を変えたり叩いて甘みを強くしたりしてはいたがそれはあくまで料理の延長である。 まあそんな男に捕まったゆっくりの運命など決まっている。おいしく調理され男の腹の中に納まるのみだ。 その日はそのれいむとまりさのほかに親れいむと親まりさ、そしてその赤ちゃんゆっくりの一家が捕まっていたらしい。 最初はまりさと一緒にお菓子をよこせだのここをゆっくりプレイスにするなどと騒いでいたのであるがその親子の調理される姿を見てぶるぶると震えるのみとなった。 まずゆっくり一家の赤ちゃんは軽く水で洗われてから生きたまま揚げ饅頭にされた。 親れいむは水を薄く張った鍋の中に入れられ弱火でゆっくりゆっくり煮込まれ、水が無くなりそうになったら少しずつ水を足していくというやり方でお汁粉にされた。 親まりさは足を焼かれ何度も何度も叩かれた後、頭を包丁で切り開かれ餡子を取り出されて死んだ。ちなみにその餡子は羊羹に使われた。 そんな様子を見てたまらずれいむはまりさに話しかける。 「ゆぅぅぅう!!ごわいよぉぉぉぉぉぉぉばりざぁああああああああああ!!ゆっぐりでぎなぃぃぃぃぃぃぃ!!」 滝のように涙を流しながら恐怖するれいむにまりさは話しかける。 「ゆゆ!!だだだいじょうぶだぜれいむ!!れれれいむはまままりさがぜったたたいまもるんだぜ!!」 と力強く答える。 もちろんまりさもこの惨状を見ているわけで、内心泣きたい気持ちで一杯だったのだが恐怖に怯えるれいむを見て自分がしっかりせねばという思いに駆られたのだろう。 つっかえながらもなんとかれいむに言葉をかけたのだ。 ただただ怯えていたれいむにはそれがどんなにありがたかったことか。 そうだ、まりさなら大丈夫。いつでもまりさは自分を守ってくれた。 この前、二人でゆっくりしているところに蛇が来たときも木の枝で追い払ってくれたし、その前に石で皮を切ってしまったときにもすぐに知り合いのぱちゅりーから薬になる葉っぱを貰ってきて自分を治療してくれた。 その前の時も、ずっと前の時にも・・・ まりさはいつも自分を助けてくれた。いつもは優しいがここぞと言う時に頼りになるまりさがれいむは大好きだった。 今度だって大丈夫、きっとまりさが何とかしてくれる! れいむはまりさの力強いことばを聞いたときそう確信していた。 しかしその期待はすぐに絶望に変わることとなる。 ゆっくり一家の調理が終わったあと男は二人の子ゆっくりにむかってくる。 すかさずまりさがれいむを庇う様に前に出る。 「ゆ!ゆっくりをいじめるじじいはすぐにしね!!さっさとまりさたちをそとにだしてね!!あとおかしもちょうだいね!!」 ありったけの勇気を振り絞り男に向かって言葉を吐いた後、ぷくぅ〜っとふくれて男を威嚇する。 しかしそんなまりさはまったく無視し男は誰ともなく呟く。 「う〜ん、他もう調理しちまったからいいがこの二匹はどうするか・・・」 そう、実はもう作りすぎなほどに男はお菓子を作っていた男は迷っていた。 実は男が養殖しているゆっくり達の分で透明な箱が全て埋まってしまっていることを忘れてれいむ達を捕まえてきてしまっていたのだった。 料理して保存するつもりだったのだがゆっくり一家だけでも作りすぎたのにこれ以上は流石に多すぎる。 なので森に返してやろうか?などと考えつつまりさに手を伸ばしていたのだがまりさの次の行動でそんな考えは吹っ飛んだ。 「ゆぎぃぃぃぃ!!じじいはとっととしね!!」 と、まりさは男の手に噛み付いたのだ! 「痛っ!・・・くはないな、まあゆっくりだしな。しかしこいつ噛み付いてくるとはてっきり怯えてばかりいるものだと思ったがな。」 そう呟くと腕をふるってまりさを壁に叩きつけた。 「ゆべしっ!!」 かなりな力で叩きつけられたのでずるずると落ちてきた後餡子を吐きながら 「ゆ”っ・・・ゆ”っ・・・」 とたまに呟くくらいにまで弱ってしまったようだ。 それを見ていたれいむは 「ばりざぁああああああああ!!ゆっぐり!!ゆっぐりじでねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 とあらんかぎりの声でまりさに話しかける。 しかし 「五月蝿い!!」 と男に蹴られて壁に叩きつけられ気絶してしまったのだった。 「はぁ・・・仕方ない。あんまりやりたくないがこいつは飼ってるゆっくり共の餌にするか・・・奴等すぐ調子にのって『もっともっと』と騒ぐからから嫌なんだが・・・」 男は二匹を拾い上げ台所に戻っていった。 しばらくしてれいむが目覚めとともに味わった感覚は寒さであった。 「ゆ”!!ざむいよ”お”お”お”お”お”お”お”お”お”!!」 どうしたのだろうか、もう冬が来てしまったのだろうか?おまけにまわりが真っ暗で何も見えない。 ここはどこなのだろう、寒いのは嫌だ怖いのは嫌だ真っ暗なのは嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!! 「もうやだぁあああああ!!ゆっぐじでぎなぃぃぃぃぃぃぃいい!!おうじがえるぅぅぅぅぅぅう!!」 これまでのことからすでに精神の限界を迎えていたれいむは髪を振り乱しながら叫ぶ。 すると、 「でいぶぅぅぅぅうううううう!!だずげでええええええええ!!」 と、どこからともなくまりさの声が聞こえる。 「まりさ!!どご!!どごにいるのぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」 真っ暗なので何も見えないがまりさがなにやらどこかで必死な様子で叫んでいるのだけはわかった。 ともかくなにか箱のようなものに入れられているのだと理解したれいむは出口を求めて這うのだった。 ここでれいむのことを説明しておくと男は餌に二匹とも使うのは飼い・・・というか養殖用のゆっくり共にあたえるのはよくない影響が出ると思い自分に反抗してきたまりさを餌に使うことにし、れいむは冷蔵庫の冷凍庫に入れたのだ。 男はここにゆっくりを入れるのを嫌っていた。 凍ってしまうとゆっくりはそのまま死んでしまい味が落ちるのだ。 ちなみに冷蔵庫のほうはいつも満杯なので入れることは不可能だ。 とはいえこの冷蔵庫のおかげで我々の生活がだいぶ楽になったことはこれを提供してくれた河童達に改めて感謝しなければならない。 いや、本当にありがたい。いろいろと。 「おっ、冷蔵庫の中のゆっくりはまだ凍ってなかったのか。・・・まあ別に良いかどうせ何もできやしないからいいけどな。さっさとこっちのやつの処理をしちまわないとな。」 そう呟いたあと男は手に持った棒をまりさに叩きつける作業に再び没頭し始めた。 どすっ!どすっ!どすっ!どすっ!どすっ! 「ゆぎゃ!!ゆべっ!!やべっ!!だずっ!でいぶぅぅぅぅ・・・だずげでぇええええ・・・ゆぐっ」 見る見るうちに皮が黒ずんでいくまりさ。 どうやら男も調理ではないためか本気で叩きつけているようだ。 「まりざぁああああああ!!まっででねえぇえええええ!!いまだずげるがらでぇえええええええ!!」 れいむはそう叫んではみるものの冷蔵庫の中には光もなければ出口も無い。 ただただ冷たい空気と冷たくて硬い物でひしめき合っている。 「ざぶぃぃぃぃいいいよお”お”お”お”お”お”お”!!ぐらいよぉぉぉぉぉおお!!でぐぢどごぉぉぉぉぉおおお!!までぃざぁああああ!!までぃざあああああ!!」 「れいぶぅぅぅぅぅぅぅうううう!!まりざはごごだよぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!どぼぢでだずげでぐでないのぉぉっぉぉぉおおおお!?」 どちらも必死で呼びかける。しかし、ゆっくり如きにどうなるわけもなくついにはまりさは男の狙い済ました一撃で口を潰される。 歯が何本も砕かれ、唇が開けなくなり 「む〜!!むーっ!!」 と唸るのみとなったのだった。 「までぃざ?までぃざぁぁぁぁぁああああ!!へんじじでねぇぇぇええ!!」 ついに悲鳴すら聞こえなくなりれいむから全てが奪われたのだった。 「もっど・・・ゆっぐりしだがっだ・・・」 そういい残すとれいむは深い深い眠りについた。 五ヵ月後・・・ 男はカチンコチンに凍りついたれいむを冷蔵庫の奥から発見することになる。 「なんだこれ?なんでゆっくりが冷蔵庫に・・・あ〜・・・あのときのやつか。」 男は随分と前のことながらそのときのことをよく覚えていた。 「そうだ・・・捕まえたゆっくりが余ったから養殖のゆっくりの餌にしようとしてそのままだったのか・・・あのときは後始末が大変だったからなぁ・・・。」 そう、あの後まりさを原型が無くなるまでぐちゃぐちゃにしていつもの無味乾燥な餌に混ぜたところ味を占めたゆっくり達がギャーギャー騒いだのですっかり失念していたのだ。 ちなみにそのゆっくり達はすでに調理済みである。 ついでに言うとれいむはまりさを助けようとあちこち移動したためかえって奥のほうに移動したため発見が遅くなったという事情もある。 男が気まぐれに冷蔵庫の整理を思いつかなかったらに遅れていただろう。 「しかしこれ・・・どうするかな?もうとっくに死んでるだろうし・・・ゆっくりの餌にするとまた面倒だし。」 前述したとおり男は冷蔵したゆっくりを好まない。加工場で特別な加工をしたものでなければゆっくりはすぐに死んでしまい味がおちるからだ。 自分で食べる気もしなかったのでたまにやってくる猫達の餌にでもしようと男は縁側で寝転んで猫がくるのを待っていた。 しかしなかなか猫は来ずそのまま男は眠りに落ちてしまった。 「うう〜?あまあまだどぉ〜♪」 すると一匹のれみりゃが凍ったれいむに気づきそのままれいむを持っていってしまった。 「うん?ふぁ〜・・・眠っちまったのか・・・結局猫も来なかったな・・・あれ?あのゆっくりどこいった?」 男は確かにそこにおいたゆっくりがいないことを不思議に思ったがもともと処理に困っていた代物だ。誰かが持っていったのならそれでいいと考え食べ物を無駄にせず済んだこと素直に喜ぶことにした。 一方ゆっくりゃは 「うー!このあまあまかたぐでたでられないどぉ〜!!」 男の家から少し離れたところでれいむを食べようとしたのだがまだ凍っていたらしくカチカチのれいむと格闘していた。 「うー!こんなかたくてたべられないあまあまなんてこうまかんのおぜうさまにはふさわしくないんだどぉー!!ぽいっするどぉ〜ぽいっ☆」 どうやら食べられないことに腹を立てそのまま捨ててしまったようだ。 凍ったれいむはそのまま茂みの中に落ちていった。 ふつうなられいむはすでに死んでおりそのままゆっくり解凍され虫や鳥などについばまれ跡形もなくなっていただろう。 しかしこのれいむは数時間後目を覚ますことになる。何故か? あまり知られてはいないが越冬に失敗し凍ってしまうゆっくりの達のなかにもごくごく少数ではあるが春になってから目覚める個体ががでることがある。 本当なら凍ったことで餡子に致命的なダメージを負ったり、雪解けの影響でそのまま溶けていくのだがなんらかの要因が偶然に重なり合い息を吹き返すことがあるのだ。 このれいむもどうやらその偶然が重なり無事に息を吹き返した。 そして、現在に至るわけである。 「ゆ!そ、そうだよまりさ!まりさぁあああああああああどこにるのぉおおおおおお!?」 れいむは親友のまりさを呼ぶ。 しかし返事は無い。 当然だろう、もう五ヶ月前に同属の餌になっているのだから。 本当はれいむも薄々まりさはもう生きていないであろうことに感づいてはいるのだがそれまでの苛烈な体験がれいむにその考えを否定させた。 しかし叫ぶれいむの目に入るのは茂みと暗闇。 そう暗闇だ。それが引き金となり霊夢のトラウマに火をつける。 「ゆぎゃあああああああああああ!!くらいのやだあああああああああ!!さむいのやだあああああああああああ!!おうちかえるうううううううううううううう!!」 暗い、寒いは冷蔵庫に入れられたれいむにとって強烈なトラウマとなっておりれいむは半狂乱になりどこかに駆け出した。 翌朝、 すでにだいぶ日は昇っているころにれいむは目覚める。 どうやら半狂乱で走り回っているうちに木にぶつかりそのまま気絶してしまっていたようだ。 「ゆぅ〜、ゆっくりおはよう・・・。」 れいむはのろのろと目を覚ます。秋晴の気持ちのいい日和であったのだがれいむの心はまったく晴れなかった。 どうやら人間の家からは逃げられたようだが親友のまりさを失ったことに変わりは無い。 しかしれいむははたと気づく。なにやら妙な違和感はあるがここはよく見た光景であることに。 そう、滅茶苦茶に走っていたれいむであったが知らぬうちに自分のおうちの近くまで来ていたのであった。 「ゆ!ゆゆぅううう!!」 いっきに嬉しさがこみ上げてくる。 まりさを失い、人間にひどいことをされたがまだ自分には家族がいる。 そうだ、おかーさんにいっぱい慰めてもらおう、おねえちゃんたちにいっぱい甘えよう、妹達にたくさん優しくしてあげよう。 まりさはいないけどまりさのぶんも自分はゆっくりするんだ。それをきっとまりさも望んでいるはずだ。 そしてれいむは優しい家族のいるおうちである洞窟にたどり着いた。 「ゆっくりただいま!!」 「「「「「ゆっくりおかえり!!!!」」」」」 「れいむどこにいってたの!!おかーさんしんぱいしちゃったよ!!ぷんぷん!!」 「おねーしゃん!どこいってたにょ?れいみゅいいこにしてまっちぇちゃんだよ?」 「まったく、れいむのいもーとはこまったさんだね!でもこれからはもっとゆっくりしようね!!」 「「「「「ゆっくりゆっくり〜♪」」」」」 そんな返事を期待していたれいむ。しかし返事はない。 そこには何も無かった。 柔らかい草のベッドも、みんなでおいしい食事を食べたテーブルも、姉妹で集めたきれいな石も、 暖かい家族も。 「みんな?どうしたの?ゆっくりでてきてね。かわいいれいむがゆっくりかえってきたよ?かくれんぼはいいからゆっくりでてきてね!・・・だれがへんじじでよぉぉぉぉおおおおおおお!!」 かつてのおうちである洞窟の中にれいむの何度目かわからぬ絶叫が響き渡った。 れいむはわけがわからなかった。悪い夢ならば覚めてほしい。そして自分はまた暖かい家族としんゆうのまりさとゆっくり過ごすんだと。 しかしそんなれいむの妄想は打ち消される。 「ゆ!そこにだれかいるの!?ゆっくりでてきなさい!!」 れいむは後ろを振り返る。 そこには近所に住んでいた幼馴染のありすの姿があった。 「あ、あああ、あああありずううううううううう!!ゆっくり!!ゆっくりしていってねぇえええええ!!」 「ゆ!れ、れいむ!もしかしていなくなってたれいむなの!!」 再会を喜ぶれいむとありす。 「ゆっぐり・・・ゆっぐりよがっだぁああああ!!ありずぅぅぅぅうううううう!!」 「れいむぅうううううう!!よくぶじで・・・ゆっくりしていってね!!!」 ほほをこすりつけあう二匹のゆっくり。 ところでこの二匹、本当は同じくらいの産まれなのだが大きさがあっていない。ありすはすでに成体なのに対してれいむは明らかに小さいが特に気にしている様子は無い。 「ゆ、ところでありす。れいむのかぞくはどこにいるの?」 少し落ち着いたところでれいむはありすに話しかける。 するとありすは暗い表情で答える。 「ゆぅ・・・れいむ、れいむのかぞくは・・・にんげんにころされちゃったの・・・。」 「うそ・・・うぞだよねありず・・・れいむのかぞくはいきてるんだよね・・・?どこかにおひっこししてるんだよね・・・そうなんでしょ、ありす?そうだよね?・・・そうっでいっでよぉぉっぉぉおぉおぉおおおお!!」 またしばらくしてからありすはれいむにこのへんのゆっくりになにがあったかを話した。 少し前のある日、突然たくさんの人間がやってきてたくさんのゆっくりが踏み潰され、おうちを壊され、家族を捕らえられていった。 そのなかにありすの家族とれいむの家族もいた。ありすの家族は最後まで自分をかばって死んでいったこと。 れいむの母親は激しく抵抗したらしくおうちの入り口でぐしゃぐしゃに踏み潰されてたこと、姉妹達はどうやら全員捕らえられ人間に連れて行かれてしまったことを話した。 そしてれいむも人間に捕らえられたときのことを話した。 れいむとありすはともに涙した。 何度も何度もお互いを励ましあった。 そしてありすがれいむにそっと話しかける。 「ねぇれいむ?わたしはここをでてほかのゆっくりプレイスにいこうとおもうの。よかったらあなたもこない?」 突然の誘いに困惑するれいむ。 「ゆ、ありす・・・ありがとう。でもまだどうすれいいのかまだれいむわからないよ・・・。」 「ごめんなさいれいむ、きゅうにそんなこといわれてもこまるわよね・・・まだしばらくはここにいるつもりだからこたえがでるまでゆっくりかんがえてね。」 そういってありすはじぶんのおうちから食べ物や藁などを持ってくると 「なにかこまったことがあったらありすのおうちにきてね。」 と言い残しおうちに戻っていった。 また広い洞窟の中に一人ぼっちのれいむ。 これから自分はどうすればいいのだろう。 家族はいない。親友のまりさもいない。 しかし、ありすは優しくしてくれた。前と変わらぬまま。きっと他のところに行ってもゆっくりさせてくれるだろう。 しかしそれでいいのだろうか・・・まりさも家族も苦しんで死んでいった。 そんな中自分はなんの偶然か生き残った。 たった一人、生き残った。 家族は苦しんで死んだのに・・・自分一人でゆっくりしていいのか・・・ いっそのことれいむは自分も家族の下へ向かう事も考えた。 しかしそれを救ったのは家族とまりさがかつてれいむにかけた言葉であった。 (れいむ、おかーさんはおかーさんにどんなことがあってもれいむゆっくりできてることがいちばんうれしいんだよ・・・。) (れいむ、まりさはゆっくりしているれいむがいちばんすきなんだぜ!!ずーっとずーっとゆっくりしていってね!!!) そうだ、そうなのだ。 みんな自分がゆっくりすることを望んでくれていた。ならばここで命を絶ってしまうのは家族やまりさを裏切ることになる。 れいむは家族を裏切りたくは無かった。 (そうだ・・・れいむはゆっくりするんだ・・・れいむのかぞくのぶんも・・・まりさのぶんも・・・ほかのだれよりもゆっくりしたゆっくりになるんだ!!) れいむはそう決心した。もう迷うことは無い。 誰よりもゆっくりしたゆっくりに!!そう家族とまりさに誓った。 と突然後ろから 「ゆっくりしていってね!!!」 と声が聞こえた。 れいむは誰よりゆっくりしたゆっくりになると決めたならばまずは挨拶からだ。誰より元気に、ゆっくりと挨拶をかえそう。 「 ゆ っ く り し て い っ て ね !!!」 「おぉ、元気なゆっくりだなぁ。これはいい材料になりそうだ。」 れいむは固まった。その声の主はあの人間だった。 れいむを捕まえまりさを殺した。あの人間。 「最近、畑の被害が多いから村中総出でゆっくり狩りしたせいかこんなに元気なゆっくりは久しぶりだ。いい材料になりそうだな。」 なにか男がしゃべっているがれいむには関係が無いこいつがまりさを殺した殺した殺したコロシタコロシタコロシタ・・・ 「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!ゆっくりしねぇええええええええええ!!!!!!」 しかし人間にゆっくりが敵うわけも無い。 こうしてれいむは再び男に捕まったのだった。 一ヶ月ほど過ぎた頃・・・ れいむはいまだ生きていた。 男の家の透明な箱の中で頭にあかちゃんのたわわに実った蔦を揺らしながら歌を歌っている。 「♪ゆぅ〜ゆ〜ゆゆゆ〜ゆ〜っくりしていってね〜♪」 すると男が近づきれいむに話しかける 「よおゆっくり、きょうもあかちゃんをもらっていくぞ。」 「ゆ〜ゆっくりしていってね!!!」 れいむは蔦の赤ちゃんをとられるがまったく気にするそぶりも無い。 ただただゆっくりとした表情で虚空を見つめている。 男にとってこのゆっくりはとても都合がよかった。 最初のうちはことあるごとに抵抗していたがそのうちまったく抵抗しなくなった。 赤ちゃんをとってもにギャーギャー喚かないし、どんなにひどい食べ物だろうとかまわず食べるしほとんど 「ゆっくりしていってね!!!」 としか喋らないからだ。 そうれいむはとてもゆっくりしていた。 なぜならゆっくりすること以外をまったく放棄することにしたからだ。 まずい餌もあかちゃんがとられることもせまい箱もなにもかもを感じないことにした。 れいむはこれからもゆっくりし続けるだろう。 男がれいむを必要としなくなるまで・・・。 あとがき ここまでお読みくださった方、お疲れ様でした。 初SSなので上手くできたかわかりませんが楽しんで言っていただければ嬉しいです。 なにか問題等ございましたら消しますので言ってくださるとありがたいです。 まだネタはあるんですが また書くかどうかは未定です。 またお会いする機会があればそのときに・・・では。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/573.html
ゆっくり達がアリスの家を遊び場にしてから季節が一回りした。 ゆっくりパチュリーが疲れないように普段からアリスの家にすんでいるゆっくり魔理沙とパチュリーは晴れの日は庭で、そして雨の日は元アリスのベットで眠り。朝は家の周りに集まってくる蝶を追い掛け回しながら食べ、お昼と夕食は午前中から遊びにやってくるゆっくり達がもってくる食事を一緒に食べる。 今は殆ど使われることの無いキッチンだが、たまにやってくる魔理沙やその友人が食事を作ってくれる時などに使っている。 満月の綺麗な夜、大きな木の根元に横と張りながら話すゆっくり魔理沙。 すっかり傷の癒えた今では、二匹とも以前のようにニコニコと話し込んでいる。 「パチュリーと霊夢ゆっくり眠ろうね」 その言葉が合図だった様に姦しかった三匹は寄り添った体を更にすり合わせて眠りに着いた。 こちらを覗いているモノが居る事など気にも止めずに。 「……さ、おき……」 眠っていたゆっくり魔理沙は自分を呼ぶ声で目を覚ました。普段は寝坊することの無いゆっくり魔理沙だが時々寝坊した時は二匹が起こしてくれる。 「ゆっくりおきちゃった!!!」 元気よく起きたゆっくり魔理沙は直ぐに違和感に気づいた。昨日は外で寝ていた筈なのに今は屋内、しかもここは……。 見覚えのある壁、そして柵。まさに、以前アリスに連れてこられたゆっくり加工場のそれだった。 「どっ、どうしてここにいるの?」 「魔理沙がまだ寝てるときに、おじさんがここであそぼうって言ってきたの」 「魔理沙が寝てるからびっくりさせようと思って寝てる間につれてきたの」 ニッコリと笑うゆっくり霊夢とパチュリー。 当然、自然の中で暮らしてきたゆっくり達は、このような施設がある事など知らない。 そして人を疑う事も知らない。アリスのことで芽生えたかと思われたそれは、その後の人間達の行動によりすっかり枯れてしまっていた。皮肉な結果だ。 「おじさん、魔理沙おきたよ!!!」 「魔理沙ゆっくりおきたよ!!!」 二匹が無邪気に声をかけた相手は、去年案内してもらった時のあの男だった。当然ゆっくり魔理沙もよく覚えている。 「二人とも、ここはだめだよゆっくりできないよ!」 「そんな事ないよ。魔理沙もゆっくりできるよ!!!」 ふたりともどうしてそんな事いうのか分からないと言った表情で聞き返す。 「ああ、お前さん以前ここに来たゆっくりかい? あれからうちの会社は変わってねぇ、今は飼われているゆっくり達を都合の悪い時に預かる仕事もしてるんだ。これから天気が大荒れになるからあの家じゃ危ないって事である人に依頼されてね。だから連れてきたんだよ」 工場職員の男は以前の様な愛想笑いを浮かべてゆっくり魔理沙に説明した。周りではゆっくり霊夢とパチェリーがしきりによかったね、と言って跳ね回っている。 「おじさん、どんな人がお願いしたの?」 「金髪の綺麗な魔法使いの女性だったよ。……たしか紫色の魔女も一緒に来てた様だけどね」 これだけで、三匹のゆっくり達には理解した。時々アリス邸を訪ねてくる人、一緒に来た人はおそらく始めて連れて来た友人だ。 「魔理沙が頼んでくれたのか」 「「よかったね!!!」」 ゆっくり魔理沙は今度こそ安心した、何気なく檻の遥か上にあるはめ込み式の採光窓を見ると、確かに風も雨も酷くなっている。殆ど手入れのされていないアリス邸では本当に危なかったかもしれない。 「安心してゆっくりできるね!!!」 笑顔の二匹も。 「ゆっくりできるね!!!」 と笑顔で返した。 「それじゃあ、他のゆっくりが襲うと大変だから、鍵をかけておくよ。おそらく明後日には天気はよくなってると思うからね」 見ると既に鍵はかかっていた、おそらく三匹を入れた時にはもうかかっていたのだろう、起きていたふたりは、初めから信頼していたのであろう。 「それじゃあ、私は他の仕事があるから。」 「おじさんもゆっくりがんばってね!!!」 去り際に自分達の柵に食事、隣の柵にペロペロキャンディを投げ入れ、手を振る男に体を大きく跳ねさせて答える三匹、その表情にはもう疑いの文字はない。 ふと、残りのゆっくり達の事が頭をかすめたが、以前は自分達もこの天気の中、雨宿りできる場所を探してずっと話していた事を思い出し、大丈夫だろうと結論づけた。 「ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」 柵といっても適度に動き回るスペースはある、森を駆ける様、とはいかないが三人ともとても楽しそうだ。 「うー。うー」 夕暮れ、あれからずっと動き続けて、さすがに元気がなくなって休んでいた時それまでは騒ぎで気付かなかった隣の声が聞こえた。 「泣いてるよ」 「どうしたのかな?」 「ゆっくりしていってね!!!」 お決まり台詞を言ったのを合図にまた追いかけっこが始まった、体の弱いゆっくりパチェリーに気を遣うから声は賑やかになる。 それはもう、隣の泣き声が聞こえない程に……。 「ごはんですよ」 といって朝と夜に食事を提供しに来る従業員(ちなみに黒い佃煮では無い)に、「ゆっくりたべるね!!!」と今回で四回目になる返事をする。隣には毎回お菓子の類が投げ込まれている。採光窓からの久しぶりの朝日に映る食事は今までよりも少し豪華なものだった。 「豪華だね」 「今日でお別れだからかな?」 「魔理沙、霊夢、ゆっくり食べようね!!!」 今日でここともお別れ、特に不自由は無かったけれど、やはり今まで慣れ親しんだ森の中の方が居心地がいい。 帰ったら何をしようかと考えて食事を食べる。 (やっぱり、魔理沙たちにお礼をしないとね!!!) 霊夢が遊びつかれているパチュリーに自分の食事を少し上げるのを見ながらそんな事を思う。 「帰ったら魔理沙たちにお礼をしようね!!!」 「「うん、しようね!!!」」 「「「ゆっくりしていって貰おうね!!!」」」 三匹とも同じタイミングで声を出す。やっぱりこのふたりと友達でよかったと新ためてゆっくり魔理沙は思った。 「おーい、お前達、引き取りに来てるぞ」 と同時に開いた扉、逆行で顔は見えないが初日に会った男の声だ、隣には二人の人影も見える。 「魔理沙達だね」 「ここで、お礼いえるね」 「「「ありがとう、おねえさん達。おかげでゆっくりできたよ!!!」」」 とびっきりの笑顔でお礼をいった三匹、まだここまで着ていないのでちょっぴりフライングだったかなと思ってまた三匹で大笑い。 その言葉を聞いた二人の少女は言う。 「あら、それはよかったわ。ねぇパチェリー?」 「そうね」 刹那、ゆっくり魔理沙の思考が止まる。同時に悪寒がはしる。他のふたりは後ろにいるので見ることは出来ないが、おそらく同じことになっているだろう。 「どうしたの、そんなに震えて? 久しぶりに再開したのがそんなに嬉しいのかしら?」 依然見たそれとは違うとても感情のある笑顔だった。まるで心から再開を喜んでいるような。 「おっ、おねえさんどうしてここにいるの?」 もっともだ、確かゆっくりレティが食べた筈。 「食べられたから?」 先ほどとは一転感情も抑揚も無い声。 「やっぱり、あなた達は頭が悪いのね。以前貴方と一緒に見た光景を忘れるなんて、ねぇ」 ゆっくり魔理沙が思い出した光景自分達の仲間がゆっくりレティに食べられる光景、しかしあまりに衝撃的でその後は覚えていなかった。 「本当に覚えていないのね。せっかく一緒にお出かけしたのに……」 いつの間にか彼女の方に乗っていた上海人形が両手で顔を覆う。 「あのおおきなゆっくりが寝込んだら後ろに穴を開けて絞り出したのよ。まぁ、私も一回見ただけだったから上手く出来るか判らなかったけれど魔法で眠らせて人形で穴を開けたら直ぐに開いたわ。さすがに疲れたからパチェの所に着いたら直ぐ眠ってしまったけれど」 愕然とした表情のゆっくり魔理沙。確かに暫く経った後、戻ってみたらレティは眠っていた。てっきり食べて眠くなったんだとばかり思っていたのに。 アリスは更に話を続ける。 「あなた達に襲われた時、万が一の為に蓬莱に手紙を持たせてここに向かわせたの。内容は、家に天然のゆっくりが数種類いるから頃合をみて捕獲して構いません、こんな感じね、頃合はパチェリーが見てくれていたの、初めは魔理沙に無理やり連れて行かれたように装ってね。あっ、そうそう私は今までずっとヴワル図書館にいたの、だって壊れた上海を直さないといけないでしょ。初め壊された時は本当にムカついたわ、お友達を大型カッターに固定してあなたを重石にして切り刻もうかと思ったくらいよ、でも幸い式の部分は無事だったから許すけど。もう悪戯しちゃだめよ♪ 丸々一年もかかっちゃったんだから、おかげでずっと篭りっきりだったんだから私、でもやっぱり図書館はよかったわ、色々な魔道書もあるし、それに」 早口言葉のように一気に話した後、何か出来事を思い出しているように黙り込んだ後。 「小悪魔から色々な話も聞けたしね」 余程為になったのだろう話した後も何度も反芻するように頷いている。 「お、おねえさんが連れて行くの?」 と、ゆっくり霊夢。彼女は寝ている時に餡を取り出された為殆ど記憶が無い、故にまだ好奇心の方が高いのである。 「そうよ、久しぶりのお家ね、私も楽しみだわ。あぁ、あなたには悪いことをしたわね、人形が勝手に悪戯していたみたいで、私はお庭で遊んでいらっしゃいって言っただけなのに。それより、あなた達は食べ物何が好き?何でも作ってあげるわよ」 「おねえさんとは帰らないよ。魔理沙が来るまでゆっくりするよ!!!」 そうだ、魔理沙がきたら助けてくれる。今までは怖かったから本当の事は話してなかったけど、ちゃんと話そうゆっくり話せば判ってくれるよ。 「あらあらわがまま言っちゃだめよ」 そんな希望も。 「だって」 打ち砕かれる。 「魔理沙には一年前に言ってあるもの、ゆくりたちが住み着いたから暫く家を譲る、恐縮させるといけないから居なくなった様に振舞ってねっ、て」 だけど家に帰ればまた仲間が助けてくれる。 いや、今度は自分から立ち向かおう何度も頼りっぱなしじゃいけない。 「それに、パチェにゆっくり達を見て貰ってるって言ったでしょ」 アリスが一緒にいた男から紙を受け取った、数字が何個も書いてある紙だ。 「あら、こんなにいいんですか? これだけ有れば家の補修に遣ってもかなり余裕がありますよ」 「いえいえ、こちらも貴重な天然モノ、しかも数種類卸してもらったのですから、この位は当然です。あぁ、今回の三匹のお預かり代も無料で結構です」 もちろん三匹には聞こえない声で、これも別に聞こえても良いのだが、小悪魔がまだ言わない方がいいですよ、と言っていたからだ。 「あの時きちんとみんなにいってたら良かったのにね」 その言葉の意味が判らないまま鍵が開けられた。他の二匹も状況が摘めていないらしい。 隣の扉も開かれた様だ、パチェリーが預けていたのだろう。れみりゃ種に体が着いているような生物。檻の札には「希少種」と書かれている。 檻の中にはお菓子が散乱していたがどれも余り手を付けていないようだ。 「まぁ、今まで屋敷で食べていたお菓子に比べたら味は落ちるでしょうけど、これからはこれで我慢しなくちゃいけないのよ。……レミィ」 「まるで私の料理が下手って言っている様ね。……まぁ良いわ、さぁお家に帰りましょう」 ゆっくり魔理沙を抱きかかえるアリスパチュリーも魔法でも使っているのだろうか、それとも着やせした胸にでも上手く乗せているのか、ゆっくりれみりゃを抱きかかえて並んで歩く。 どうやら今日は一緒にアリスの家に向かうようだ。他の二匹は先ほどの言葉が効いたのか嬉しそうに跡をつけている。 「あぁそれと魔理沙、まだ帰りたくなって言ってると……」 知っている扉が開かれる。中も以前と同じだった。そういえばあの男は預かる仕事もしていると言っていた。 「……そう、大人しくしていなさい抱えてる方も楽じゃないんだから」 とても優しい笑顔だった。 ……やっぱり逃げるのは無理だったようだ。 いま、ゆっくり魔理沙は他の仲間が助けてくれることと、本当にアリスが優しくなったかもしれないという希望に賭けるしかないと思った。 please wait next story
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1506.html
ゆっくり戦争 ある年ある時、A国がX国に対して宣戦布告した。 X国は戦いを拒み平和的に解決しようとしたが、A国はそれを拒否した。 しかしX国は小国で、武器や兵士も少ない。 これでは圧倒的虐殺ではないかと提案されたのがゆっくり戦争である。 ゆっくり、というのは元々いつの間にかいた珍獣らしきもので、体は餡子でできている。 研究に研究を重ねて人工的にゆっくりを作る事も可能にし、これを実践投入すればまさに人間に被害のない平和的に戦争ができるという事だ。 元が餡子なのでコストも低く、量産する事ができる。 A国もゆっくりを使う事を合意した上で戦争が始まった。 A国領土の離島付近。 「今日は実戦だ! 何時死ぬかわからないし何時敵が来るかもわからない! だが、お前たちは過酷な訓練を勝ち抜いてきた兵士だ! 今日ここで我々にゴミクズと呼ばれていたお前らは立派な兵士となる! 行け!」 教官の合図とともにボートが発進する。 ボートの数はおよそ100、ゆっくりが10人入ると計算して1000匹ものゆっくりがボートに収納されている。 「ゆっ! いよいよだね!」 「れいむたちからおかしをとったやつらからしかいしするときだね!」 なにやら勘違いをしているようだが、これも教官の刷り込みである。 ゆっくりたちにとっては、敵は『ゆっくりプレイスに侵入してくる悪いゆっくり』なのだ。 「ゆゆ! 見えてきたよ!」 「みんないくよ!」 島が視認できる頃、轟音が鳴り響く。 ゆっくりまりさ二等兵がボートから顔を覗かせると、他のボートが沈んでいた。 「だずげべえ゛え゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇ」 「じにだぐだい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」 沈むボートに取り残されたゆっくりたちは悲鳴を上げるが、波に飲まれて消えて行く。 まりさ二等は歯軋りをして船の先頭についてある機関銃の上に乗った。 構造は普通の銃とは変わりない。 だが、手のないゆっくり達のためにボタン式の銃となっている。 つまり、機関銃の前に立ってジャンプをすればフルオートで弾が発射される仕掛けである。 「ゆっくりしね!」 ジャンプすると轟音が鳴り響き、機関銃から弾が発射される。 それを見たほかのボートのゆっくり達も、機関銃に乗って弾を乱射する。 島から襲い来る雨のような弾丸にボートの中にいるゆっくり達も被弾し死亡する。 そして。 「りくちだよ! みんなおりてね!」 まりさ二等が叫び声を上げ、武器の槍を装備する。 槍といっても木を斜めに切っただけという質素なもの。 ゆっくりの戦争に通常兵器など使ってられない。 機関銃の弾も、コストが低い特殊なものを使っている。 「ゆゆ! わかったよぶべぁ!」 出てきたれいむ一等兵が被弾し頭が砕け散る。 島の防衛ラインからの攻撃だった。 「いそいで! はしらないとたまにあたるよ!」 まりさ二等を先頭に、ゆっくり達は走り出す。 他のボートからもゆっくり達が飛び出し、撃たれながら進む。 「ゆあああああああ!!」 叫び声とともに丘に登り、防衛ラインにいたゆっくりれいむを突き刺す。 「ぎゅげっ!」 悲鳴とともに絶命する敵れいむ。 だが、仲間のゆっくり達がすぐに槍を持ってまりさ二等に突っ込んできた。 「まりさあぶない!」 突っ込む敵ゆっくりをありす二等が刺し殺す。 もしありすが助けなければ、まりさ二等は串刺しにされていただろう。 「ありがとうだぜありす!」 「べ、べつにあんたのためなんかじゃないわ! てきがいたからたおしただけよ!」 戦闘中によくそんな悠長なことがいえたものだ。 まりさ二等の班は、もう3匹しか生き残っておらず、まりさ二等、ありす二等、れいむ一等のみとなった。 A国上陸別地点。 れいむ伍長率いる班は、弾丸の雨から抜け出せずにいた。 彼女の班に新兵達も、がくがくと震えているだけだ。 使えない奴ぞろいだ、とれいむは思った。 「もうげんかいだぜ! まりさはいくぜ!」 「だめだよ! いまいったら――!!」 業を煮やしたまりさ新兵が制止を無視して雨の中を駆け抜ける。 だが、すぐに被弾して体から餡子が噴出した。 「ぎゅぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 悲鳴を上げてまりさはのた打ち回る。 れいむ伍長はそれを冷ややかな目で見た。 どうだ、命令違反をすればこうなるんだ。 「たいちょう! まりさをたすけてください!」 「まだいきてるよ!」 他の新兵たちは助ける事を要求する。 だが、れいむはそれを却下した。 「ばかなこといわないでね! みんないまたすけにいったらぜんめつだよ!」 「うるさいよ! ひとごろしのたいちょうはしね!」 ぐさり、とれいむの頬に槍が刺さる。 「ばがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! だれをねらっでるんだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 れいむの叫びを無視し、新平たちは上官を刺し殺した。 自分達ならやれるはずだ。 こんな無能な上官の言う事など聞いてられるか。 そう皆が思い、まりさの救出に向かった。 「まりさあああああ! たすけにきたよおおおおおおお!!」 「ゆぐひゅ……ぐひゅ……」 息も絶え絶えのまりさ新兵のもとへ、他の新兵達が集まる。 「だいじょうぶ?! いまたすけてあげびゅばがばっ!!!!」 笑顔で元気付けようとしていたれいむの顔が吹き飛ぶ。 残ったのは焼け焦げた匂いとれいむの下半身だけだった。 「れいむうううううううううう!!!」 「いそいではこぼうね! みんなはやく!」 急いで傷ついたまりさ新兵を抱きかかえ、海岸の岩陰に隠れようとする。 だが、ゆっくり一匹分を担いでいるゆっくりなど、ただの的だ。 「ゆ! あそこでのろまなやつがいるよ! ばかだね!」 敵まりさは新兵達を見つけてそこに機関銃を向ける。 「ばかなゆっくりたちはしね!」 そしてジャンプをした。 鉛の雨が新兵達を貫く。 「ゆがががががががががっががあがががげあがげあえげげあげ!!!!!」 「だずげばびょべばっ!!!」 「ゆ゛っぐじじぢゃぎゃっだびょお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 こうして、仲間の命を優先した新兵たちは死に、任務遂行を第一に考えたゆっくり達は生き残った。 皮肉な事だが、これは戦争なのだ。 ■■■ 「我が国の海岸の離島が制圧されました!」 通信兵が上官に告げる。 もちろん人間だ。 「糞! ゴミクズ共め! 自分の国さえ守れんのか!」 それは間違っている。 ゆっくり戦争をする上での条約がある。 一、戦争にはゆっくりを使う。人間はサポートのみとする。 二、兵力は均等にする。もしこれを違えた場合は人間を実戦投入する。 三、使う武器も均等に、さらに平等にする。槍と機関銃、爆弾のみとする。 四、ゆっくりが人間を攻撃した場合、敵国であれど問答無用で射撃して良い。 つまり、ほぼ五分五分の戦いなのだ。 つまり、この戦争において重要なのは上官がいかに有能かということにゆだねられる。 もし突撃しか知らない上官が知識をもった上官に挑もうとすれば、当然知識を持った者が勝つのだ。 兵力の問題や兵器の問題ではない、指揮する人間に問題がある。 「離島はあとで取り戻す! 国境ラインに防御を固めろ! クズ共にわが国の恐ろしさを思い知らさせろ!」 A国国境ライン。 「いいか? 俺たちは空のタクシーだ。 塹壕まで連れてってやるから後は自分達で何とかしな!」 「ゆっ! わかったよ!」 ヘリに乗せられたゆっくり達は国境ラインぎりぎりに位置する場所に掘られた塹壕に降ろされる。 その時、鉄を叩いたような音が響いた。 ヘリに弾が当たった音だ。 「おい、ちょっとそれとってくれ」 パイロットの隣にいた兵士がゆっくりに銃を求めた。 素直にゆっくりはそれを兵士に渡す。 「人間様にたてついた糞饅頭はどこだぁっ!」 ロープを腰に巻きつけ、ヘリの足の部分に自分の足をかける。 そして国境ラインに近づき発砲した。 「ゆぎょお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「ぶべいだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 ライフルの弾が機関銃を撃った敵まりさの体を貫いた。 餡子を撒き散らし、目玉が飛び出て死亡する。 「はっ! たいした力もないくせに……、おい! 帰ったら酒飲みに行くぞ! うんと高い奴飲んでやる!」 「はいはい……」 撃ち終わった兵士たちは基地へと帰っていった。 塹壕にいたゆっくり達はそれを見て勇気付けられる。 「てきはばかだからおにーさんたちにころされたんだね! ばかだね!」 そして皆が笑い出す。 だが、それも轟音で掻き消された。 機関銃が塹壕に向かって一斉射撃されたのだ。 対抗しようと塹壕の中にある機関銃を放つ。 そして皆槍を持ち突撃した。 相手の国も、ゆっくりが突撃してくる。 「ゆぎゃっ!」 「じにだぐだにいいいいいいいい!!」 悲鳴、怒号、狂喜。 幾多の言葉が戦場に鳴り響く。 それはまるで音楽だ。 「しねっ! しねっ! しね!」 あるまりさはもう死んでいるれいむの顔に何度も何度も槍を突き立てる。 「うふっ、うふふふふふふ! うふふあははははははは!!」 恐慌状態に陥ったれいむは笑いながら銃弾の雨を浴びる。 「まりざああああああ!! ずっぎりじようねええええええええええ!!!」 気が狂ってしまったありすは、ゆっくりの死骸に向かって体を摺り寄せる。 阿鼻叫喚の戦場の中、みな思い思いに死んで行く。 決して自分が安らぐ事も知らずに。 戦いが終わった後の自分達の行方も知らずに。 じじいのファックの方が気合あるおまけ。 某国の基地にて。 「隊長、それなんですか?」 「さぁな、だがこれで射的の練習をしろだとよ」 隊長(CV:大塚明夫)が奇妙な生き物を連れてきた。 ゆっくりれいむとか言うらしい。 「人を殺すのに抵抗がある新兵にはもってこいだって教官が言ってたな」 「そうですか」 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」 隊長の足元でぴょんぴょんと跳ね回る。 俺はそれを掴んだ。 「はなしてね! ゆっくりはなしてね!」 喚きだすそいつに俺はすこしだけ苛立った。 なんだか知らないがこいつはすごくむかつく。 「で、どうするんですかこいつ」 「まぁ見ていろ」 そう言って隊長はゆっくりを野に放した。 不思議なものを見るかのようにあたりを散策し始めるゆっくりれいむ。 犬だったら可愛いかもしれないが特にそうは思わなかった。 突然、隊長が銃を構える。 そして。 「ゆっぐりでぎだいよ! だずけてね!」 「少し照準がずれてるな……、ちゃんと整備しろといっただろ」 「すみません」 頭を掻いて俺は謝る。 れいむはなにがおきたのか分からず恐怖のために逃げ出している。 隊長は狙いを定めた。 「三ミリずれてると考えて……この辺か」 ぱん、と一発の銃声が鳴り響く。 「ゆ゛っ!」 丁度れいむの後頭部を直撃して体から黒い物体を飛び散らせた。 近寄ってみると、丁度額の真ん中に風穴が開いている。 さすが隊長である。 「どうだ! 頭に当たってるか!?」 遠くで隊長が聞く。 「はい! すごいですね隊長!」 俺は素直に賞賛した。 「悪いんだがその死体は教授のところに持っていってくれ!」 「あ、はい、わかりました!」 俺は死骸を持って研究室と書かれた部屋へ向かう。 なかにはやせ細った眼鏡金髪の男がいた。 これが教授(CV:子安武人)である。 「おやおやさっそくゆっくりれいむで試し撃ちですかな? クークック」 この笑い方が癪に障るがとにかく死骸を渡した。 「これ、なんですか?」 そう聞くと教授は眼鏡を輝かせ俺にどアップで近づく。 「聞いて驚いてくれたまえ! これこそ我が生涯で最高傑作! 知能を持った饅頭なのだ!」 教授はくるくる回転しながら笑い出す。 そうとうマッドだ。 中の人もそうなので仕方ないが。 「はぁ、そうですか」 再びキラリと眼鏡が光る。 俺はそれを見て少し引く。 「きみぃ、わかっていないようだね? このまんじゅうのおもしろさを?」 「い、いえ……決してそんなこと――」 「ならば教えてあげよう! ゆっくりはもっとも人間に近づける事ができた生物なのである! チンパンジーやオランウータンなどではできなかった言語を喋る生き物!」 ぽちっとどこぞに仕掛けてあったボタンを押す。 床が割れて鉄板が現れ、うえからは透明なケースに入れられたゆっくりが現れる。 だが、さっきのとは違う黒い帽子をかぶった奴だった。 「おじさん! ここからだしてね!」 さっきのれいむと違う、普通に人間の言葉を喋っていた。 「これぞまさしく究極的に人間に近づいたゆっくりまりさである!」 「どこらへんがですか?」 「ふふん、良くぞ聞いてくれたよきみぃ。 ゆっくり! 仲間の居場所を吐けば助けてやるぞ!」 そう言うとまりさは体を膨らませた。 「いやだよ! そんなことできないよ!」 「ほほう、ではこんなことでも?」 ボタンを押すと水が流れ鉄板の上に流れる。 だが、一瞬にしてそれは湯気となった。 そこへまりさが落とされる。 「あじゅい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!! ゆっぐりでぎないよおおおおおおおおおおお!!!!」 悲鳴を上げるまりさ。 やかましいので少し耳を塞ぐ。 「これって動物虐待にならないんですかね?」 「問題ないのだよ、実はゆっくりはまだ動物としても認められていないからねぇ」 くいくいと教授は眼鏡を直す。 この程度だったら俺はまだ吐かないかな。 「いぎいいいいいいいいい!! あづいいいいいいだずげで! ゆっぐりざぜでよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「気になったんですがゆっくりするって何ですか?」 「そこっ! そこ重要なのだよきみぃ! この饅頭たちにとってゆっくりするということは自分の思い通りに事が進み、かつ欲求が満たされる事こそがゆっくりということ! つまりっ! 人間の本能と同じ作りになっているのだああああああああ!!」 やかましいので耳をさらにふさぐ。 なるほど、つまりゆっくりは本能のままに生きているというわけか。 「だが悲しい事に人間には理性というものがある、理性を保って生活している人間にとって本能だけで生きているゆっくり達とは相容れないものなんだ」 急に真面目な口調になり俺は吃驚した。 「いいまず! だがらだずげでぐだざいいいいいいいいいいい!! おねがいでずううううううう!!」 ついにだめになったのかまりさは助けを求めてきた。 自分のために仲間を売るとは、軍法会議ものだな。 「クークック、んじゃお前は元のところへー、ぽちっと」 ボタンを押してまりさはケースに回収される。 底辺が火傷して動けなくなったまりさは頬がグチャグチャになるまで泣いていた。 「どうだねぇ? 興味が沸いてきただろうぅ? ぜひまた私のところに来てくれたまえ! いま私は論文を書かなければならないのでね!」 そう言って追い出された。 なんだったのだ、あの人は。 訓練所に戻された俺は愕然とする。 的がすべてゆっくりになっていた。 しかもそれを兵士達が嬉々として撃ち殺している。 俺はめまいがしながらも、銃を手に取った。 あとがき おまけが本番だった。 所詮ゆっくりなんて戦争の道具か的が関の山だろ、な? ごめんこ。 パチュリーの名前はよく間違えるんだ、勘弁してくれ このアフォが書いた作品。 霊夢の怒らせ方 ゆっくりデッドライジング1~3? 霊夢のバイト 慧音先生とゆっくり ゆっくりCUBE ゆっくりと男 虐待おねーさん 紫饅頭にクイズ出せば自滅してくれる 昔の遊び 書いた少尉(なんかのゲームで少尉止まり):神社バイト このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/382.html
「すっきりしたいわねぇ」 「もうすこしさがせばまりさがみつかるわよ」 「まりさはぁはぁ…」 「とかいはのてくをおしえてあげるわぁ」 …なんとまあ、うざいものを見てしまった。 森にちょっと狩りにでも行くかと思い、猟銃もってでかけた矢先に興奮したゆっくりありす達にあってしまった。 目ぇすわってるし、なんかはぁはぁ言ってるし、よだれたらしながらぶりょんぶりょん移動してるし。 数としては五匹ほど。それほど多くはないが普通のゆっくり一家は全滅するだろう。 このまま回れ右して見なかったことにすれば問題ない。 そう思いくるりと後ろを見たところでふとあることを思いついた。 「うふふふふ…」 「まりさぁ…」 「すっきりぃ…」 …問題はこれを実践するにはそこにいるレイパーありすを捕まえなくてはならんが 少し悩んだが結局俺はありす達に近づくと持っていた籠に全部放り込み加工所へと向かった。 「とまあこういうことをやってみたらどうかと思ったんだが」 「ふむ…なかなかよさそうだね。早速ありす担当を呼んでみるよ」 ここは加工所。まあゆっくりを人間に役立つよう加工するところだ。 だいたいのゆっくりは養殖されて加工し甘味物になっている。 さすがに野生のゆっくりは何を食べてるかわからないので食料にはならないが、それ以外の生活用品にはなる。 具体的にはつぶして肥料とか飾りを加工して雑巾とかだ。そのため野生のゆっくりを引き取ってくれるという一面がある。 ちなみに俺がさっきまで話してたのはここに働く友人。結構いいやつだ。 その性格からか他の村の人と交渉役をやっている。 「さっさとここからだしてね!!」 「ここはえれがんとじゃないわ!!もっととかいはにふさわしいばしょをじゅんびしなさい!!」 「ついでにおいしいものもね!!」 「まりさもいればとってもりっぱよ!!」 「そこまでするならとかいはありすのじゅうしゃとみとめてあげるわ!!」 そして俺が捕まえたありすは近くのオリに入ってる。さっきから叫んでてうざい。 とりあえず無視だ。ゆっくりを相手にしたってキリがない しばらく待つと友人が何人か連れてやってきた。たぶんあれがありす担当だろう 簡単に挨拶をすませると早速返事を聞いてみた。 「なかなか面白そうな企画だと思います。やってみましょう」 これが向こうの返事。結構ノリノリでした。 俺は担当と握手をすると早速捕まえたありすを渡した。 後はしばらくの間待てば結果が出てくるだろう 一週間後… 「で、これがその駆除ありすか」 「そう、君が考えたゆっくり駆除ありす」 「なんというか…きもいな」 「僕もそう思うよ」 加工所のとある一室で会話する俺と友人。 俺達が見ているのは以前より少し大きくなった一匹のゆっくりありすだった。 しかしその顔は以前より相当醜い。こんな人間を見かけたら例え何もやってなくても捕まえたほうがいいだろう。そんな顔だ。 まず目があっちこっちをぐるぐると動きながら見ている。左右別々だ。しかもそれがかなりの速さである。 口からはよだれがだらだら流れているし、興奮が抑えられずはぁはぁどころかゼヒアーって感じの呼吸音である 確か呼吸困難に陥ったらこんな感じの音がするはず。 そして下あご辺り。すでにぺにぺにが臨戦態勢だ。即座にその辺のゆっくりを犯すことができるだろう。 わかりやすく言えばありすのレイパーとも言うべき側面を前面に押し出したような生き物である。 「で、これは役に立つのか?」 「発案したのは君だろうに…一応実験は成功したよ。あとは野に放つだけだ」 「成功しそうな顔はしてるな…うん、とりあえずやってみてくれ」 俺は友人とともに外にでてしばらく歩く。その間駆除ありすは箱に入れられたがその間ずっと興奮しっぱなしだった。 呼吸困難な音が聞こえてきて、歩いてる間あまりいい気分ではなかった。うーむ便利なものが完成したのになぁ 「こいつってしゃべれるのか?」 「いや、残念ながらそれは無理らしい。すっきりすることしか考えられなくて周りの声は聞こえないらしいよ」 「うーむ」 道具として考えるなら問題ないがここまで非情な存在もないかもしれない。 「これが駆除ありすの大体の内容。ほとんど君の希望通りになったよ。少し担当が使いやすいよういじったけど」 「へぇ…」 友人から渡された書類をめくる。それはこのゆっくり駆除ありすの説明書だった。 とりあえずざっと読んで簡単に説明するとこうだ。 ゆっくりは小さいときにすっきりすると子供に餡子を吸われて死んでしまう。 そして成体のゆっくりも一度にあまりにも多くの子供を作ると餡子の吸われすぎでやはり死んでしまう。 この性質を利用したのがこのゆっくり駆除ありすだ。 このゆっくり駆除ありすは他のゆっくりよりも強い性欲を持つゆっくりありすの本能を強化したものである。 具体的にはとかいは(笑)の理性の部分のカスタードを捨て、他のありすの性欲の部分を移植している。 そのため野生のありすより数段性欲が強く、常に発情期となっている。 また性行為に関する体の部分も小麦粉で強化されており、すっきりを百回繰り返しても問題ないほどだ。 そして普通のゆっくりより人間で言う精子を大量に放出する。 この結果どうなるか。 このゆっくり駆除ありすに襲われたゆっくりはすっきりさせられて死んでしまうわけである。 加工所からある程度はなれると、ゆっくりの家族を発見する。 れいむとまりさのありがちなゆっくり一家だ。全部で十匹くらい。 二匹が親で残りが子供。ためしにやるにはちょうどいいだろう 「いい相手がいるね。早速離してみようか」 「ああ、頼む」 友人が箱の中にいた駆除ありすを解放した。 箱から出されたありすは近くを目だけですばやく確認すると、ゆっくりとは思えない速さでゆっくり一家の方に向かう。 「ゆ?ゆっくりし…」 「あああああすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきり!!!」 「ゆぎゃあああぁぁぁぁ!!!!」 あっという間に近くにいた子まりさがすっきりさせられて黒ずんで死んだ。 「すげぇ早いな」 「常に興奮しててすっきりする直前みたいになってるらしいよ」 こんなに早いと男としてどうだろうという気がするがゆっくりだからいいか。 「すっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきり!!!」 「ぴぎゃぁ!!!」 会話している間に二匹目の子まりさが死んだ。 「ゆげぇ!!!ありすう!!!」 「みんなありすはゆっくりできないよ!!はやくおかーさんのくちのなかにはいってね!!」 「きょわいよー!!!」 「たちゅけてー!!!!」 異変にようやく気づいたゆっくりれいむとまりさが慌てて逃げ出そうとするが。 「すっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきり!!!」 「ゆぎょぉおおおお!!!」 三匹目の子れいむが犯されてすぐに黒ずんでいく 「ま、まりさはにげるんだぜ!!すっきりするなられいむですっきりするんだぜ!!」 「どうじでぞんなごどいうのおおおお!!!!」 「ありすにすっきりさせられたらゆっくりできないんだぜ!!まりさはもっとゆっくりしたいんだぜ!!」 親まりさは早速裏切って逃げ始めた。れいむはその後を追いたいが子供達がまだ全部入っていない。 だがここでありすが不思議な行動をとる。 「なんでこっちくるんだぜぇぇぇぇ!!!!」 「ばでぃざああああああああ!!!!!!」 れいむを無視して一気にまりさのほうへ走り出したのだ。 まりさもそこそこ足が速いが、強化されたありすはすぐに追いついて押し倒してしまった。 「すっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきりすっきり!!!」 「なんでなんだぜええええええええ!!!!!」 大量の茎を生やしてあっという間にまりさは黒ずんでしまった。 成体なので子供が出来るかと思ったが、頭に異様なくらいびっしり生えた茎には小さい実のようなものがせいぜいであった。 あれでは子供にはどうあがいてもならないだろう。 「頭にびっしり茎が生えたゆっくりってキモイな」 「あはは…」 その光景を見て思わずもれる感想。友人も苦笑いだ。 「相手が成体でも子供ができないんだな」 「計算上だと大体六十~七十ぐらい生えるらしいよ。それだけ多いとよっぽど大きくないかぎり子供もできないとか」 「駆除をするという点では優秀だな」 やってる行為は子供を増やすはずなのに目的は駆除。これだけ矛盾に満ちてるのもある意味すごい。 「れいむをおいていったからだよ!!そんなひどいまりさはゆっくりしんでね!!」 「ゆっくちちんでね!!」 「くるちんでちんでね!!」 黒ずんだまりさに罵倒する残った一家。そんなことしてる暇があるなら逃げりゃいいのに。 「ひゃああああ、すっきりだぁ!!!」 「なんでこっちくるのおおおおお!!」 「こっちこにゃいでねえええ!!!」 「そきょでゆっくちちてねええええ!!!!」 残る一家に襲い掛かるありす。 それほど時間もかからずゆっくり一家は全滅した。 「とまあこういう結果になったよ」 「うーむ、すごいものをみてしまった」 黒ずんでいた死体を食べる駆除ありすを回収する友人。まだ試作品なので野生に解き放つわけにはいかないそうだ。 だがいずれは一定量生産して駆除ありす部隊なるものを作る予定らしい。 このありすで部隊を作って襲わせればうまくいけば群れどころかドスも駆除できるそうだ。 うまくいけば野生のゆっくりを壊滅させることもできるかもしれない まさか同族によってゆっくりできなくなるとは饅頭どもも思うまい ゆっくりの未来はまっくらなようだ。…もともとそうか ~~~~~~~ ノリと勢いで書いたが結構ありかもしれんな、これ そういやゆっくり人形が作られるそうだがマジだろうか たぶんネタ商品だと思うが…だよね?ブームにならんよね? 過去作品 巨大(ry 餌やり ゆっくり対策 巨大まりさ襲来 ゆっくり埋め どすまりさの失敗 原点 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5137.html
厳しい冬が終わりを告げ、春めいた陽気の日々が続くようになると、山の竹林では一斉にたけのこが生え始める。 この竹林の周辺を住処とするゆっくり達にとっては最高のご馳走であり、冬を生き延びた自分たちへの山からのご褒美とも思えるものだ。 「ゆっゆっゆー ゆっくりしていってね!!!」 「ここに、おいしそうなたけのこさんがあるんだぜ! まりさがとってあげるんだぜ!」 「「「おとーしゃん、ゆっくちがんばっちぇね!!」」」 ここにも、6匹でなかよくたけのこ掘りに興じているゆっくりの家族がいた。 成体の「れいむ」に「まりさ」とれいむ2まりさ2の赤ゆっくり達。 たけのこは、土の中のまだ葉が開いていない物が美味とされるが、ゆっくり達はカサカサと音を鳴らし地を這うようにして動きまわり、器用にたけのこを見つけていく。 ゆっくり達の身体的な特徴は、真にたけのこを探し当てるのに適していた。 「ゆぅぅ〜 ゆぅうううーー・・・!!」 「おとーしゃん がんばっちぇね! おいしいたけのこしゃんたべさせてね!」 「あ! たけのこしゃんのおちりがみえてきたよ!あとちょっとやよ!」 「おかーしゃんすごいね! おとーしゃんすごいね!」 「ふたりちゃりとも ちぇからもちですごいね!」 かわいいわが子達の声援を受けて、両親の作業にも熱が入っていき、見事に土の中からたけのこを取り出すことに成功した。 「ゆぅぅぅうう・・・・・!!!」 「「すっぽりーー!!」」 間の抜けた、掛け声とともにたけのこを抱えたまま二匹は力を入れた方向に転がっていく。 たけのこと一緒にコロコロと2,3回転がった程度で回転は止まり、心配して跳ね寄る子供達に2匹はニッコリと微笑んだ。 「やったぜ! たけのこさんが掘れたぜ!」 「まりさとれいむにかかれば たけのこさんもいちころなんだよ!」 「ゆゆー おとーしゃんやったね!」 「これで たけのこしゃんむーしゃむーしゃできるね!」 「おかーしゃん だいじょうぶ? いちゃくなかった?」 「ゆぅぅ〜 とっちぇも ゆっくりできちょうな たけのこしゃんだねぇー!」 キャッキャッとはしゃぐゆっくりの家族達は完全に、たけのこに気をとられて浮かれていたため、周囲に対する警戒が薄くなっていた。 この時期、たけのこを狙ってイノシシなども竹林によく姿を現すし、ゆっくりにとって「ゆっくりできない」存在である人間なども竹林に入ってくる。 周囲への警戒はしすぎるということがないくらいに、厳にするべきであったのだが、この家族は取ったたけのこをその場で食べ初めてしまった。 「むーしゃ むーしゃ しししししぃーしあわせぇぇーー!!!」 「「「「ちあわしゃへーーーー!!」」」」 「うっめ! これうっめ!」 しかし、この無警戒には理由があった。 この家族がたけのこを取っている場所は、山の竹林の中でもかなり奥まっているし、やや急な斜面をびっしりと成長した竹が覆っている、竹の密集地帯だった。 そもそも、良いたけのこはある程度、竹林を伐採してたけのこの出てくる余地を作ってやって、初めて生えてくるものである。 効率を重視する人間達は、最初から目をつけた竹林に手を入れて、良質な物を手に入れようとする為、竹林の奥までわざわざ入ってくることは稀であることを、この家族は学習できていた。 野良にしては、優秀なゆっくりと言える部類であり、この家族の未来は真にゆっくりしていると言えた。 しかし、そう上手くいかないのが人生・・ もといゆん生である。 この家族の破滅の足音は、頭上50メートル付近で轟音を轟かせた。 バチバチチチッッ パァーーン ビチチチッ!! 「「ゆゆっ!!?」」 ゆっくりとしあわせーを交互に繰り返し、緩みきっていたゆっくり達の下膨れの頬が一気に緊張する。 彼女達からは目視できない、はるか頭上で鳴ったその音は親達ですら生まれてこの方耳にした事が無い音であり、赤ゆっくり達はたちまちパニックを起こしてしまっていた。 「「ゆぅーー このおちょなにぃー??!」」 「「ゆっぐじでぎにゃいよお”お”お”お”お”お”!!!」」 「おちびちゃん達! 落ち着いてね! お母さんにゆっくりついてきてね!」 「まりさが付いてるから安心するんだぜ! おかあさんにゆっくりついていくんだぜ!」 親れいむが子供達を先導し、親まりさはその場にしばらく留まって周囲を警戒した。 緊急時の役割分担すら完璧であり、自分達も初めて遭遇する事態であるにも拘らず、迅速に巣へ引き返し始めた。 先導する親れいむと親まりさにはさまれるようにして、4匹の子供達が安全に巣へ誘導された。 あたりには焦げ臭い匂いが立ち込めていたが、目に見える範囲での明確な出火は確認できず、事態を把握しきれない事に、親まりさは言いようの無い不安を覚えていた。 {何が起きたかはわからないけど、みんなのゆっくりはまりさが守ってみせる!} 心の中で、そう決意しながら家族とともに安全な巣へ引き返していくゆっくり達。 彼女達は知る由も無いことだが、餌場たる竹林の上空には高圧送電線が通っており、伸びきった竹が接触することによって、短絡(たんらく)が発生していたのだった。 そしてこの事象が、今まで人間の進入を拒んできていた竹林に人間を呼び込む原因となることを、勇敢な親まりさは知りようも無いのだった。 ==翌日== 「あーーーあぁ めんどくせぇなぁ」 そんな風に悪態をつきながら、長柄鎌とのこぎりを装備して5人の仲間と一緒に山の斜面をノロノロと登っていく一人青年の姿があった 年の頃は25、6といったところだろうか? ひたすらダルそうにしながら山の斜面を登っていく。 昨日の送電線の短絡事象は、変電所などの関連した設備にはたいした影響は及ぼさなかったが、 再発防止のため、彼らを含む複数のグループが送電線の巡回検査を行う為に山に入り込んでいた。 この青年、いつもはデスクワークなどを専門とし、現場作業にあっては下請け等をこき使う為、周囲からは白眼視されていたが、本人はそんなことは大して気にする様子も無くオフィスで砂糖のたっぷり入ったコーヒーをすすり続けており、入社以来使い続けた椅子はその重量を支えることが難しくなっていた。 シュボ スパスパ フゥーーーー あろうことか、火気厳禁の山林でタバコを吸うこの男は、他の仲間からどんどん距離を開けられていき、目的の竹林近くに到着した頃には、すでに竹の伐採が始まっていた。 「じゃあ、私達は鉄塔のところまでこのまま竹を切りながら向かいますんで、すいませんがこの辺りの竹をお願いしてもいいですかね?」 連れてきた下請け業者の責任者が、そのように申し出ると青年は何も言わずに黙ってタバコを咥えたまま、2,3度頷いた。 他の五人はそのまま、上空の送電線を確認しながら、送電鉄塔を目指して進んでいった。 青年は適当に、腰の辺りまで伸びているたけのこを鎌でつつきながら、2本目に火をつけた。 吸い切った一本目のタバコを、腰を屈めて地面にこすり付けていると、視界にふと、ところどころ齧られた跡のあるたけのこを見つけた。 大きな齧り口もあれば、小さなものもある。 イノシシかなにかとも思ったが、それにしては齧り方が控えめな様な気がした。 もっともこの青年は、イノシシの齧ったたけのこなど見たことが無いので、そんな気がしただけであり、そのうちにそんなたけのこには興味を失ってしまい、ささやかな自分の義務を遂行するために、ゆっくりと立ち上がった。 「もうちっと、””ゆっくりしても””いいかも知んないけどさ〜」などと呟きながら・・・・・・・・。 昨日の不意に起きた、破裂音を警戒して、ゆっくり達はいつもとは違い十分に警戒しながら、餌場に向かっていた。 彼女達の巣は、倒木などで出来た天然の屋根に守られており、夏は涼しく、冬は少しの工夫で寒風を凌ぐことが出来た。 入り口を塞ぐ葉っぱを取り除き、親まりさが周囲を警戒しながらでてくる。 その後に、子供達が続いて親れいむが葉っぱの上にさらにカモフラージュを施せば、出発の準備は完了である。 親達の緊張が伝わったのか、子供達も今日は口数が少ない。 しかし 昨日おなかいっぱいになり損ねた分、今日こそはいっぱいたけのこさんをむしゃむしゃしてやろうと、心は踊っていた。 親達はゆっくり餌場に移動しながら、昨日のことを話し合っていた。 「ねぇ まりさ 本当に大丈夫かしら? 昨日の事もあるし・・・ 今日は他の餌場でもいいんじゃないかな?」 「ゆぅ〜〜ん・・・ 」 「「おとーしゃん れいみゅはたけのこさんたべたいー」」 「「おかーしゃん まりしゃもたけのこしゃんむーしゃむーしゃしたいんだぜ!」」 「「ゆぅぅーーん・・」」 二匹の親ゆっくりは困ったような顔をしながらも、子供達の期待に満ち溢れた、キラキラした目に押される形で、昨日の竹林付近にまで歩みを進めていた。 そしてそこで、腰を屈めて、昨日彼女達が掘り出したたけのこを観察する人間に出くわしたのだった。 すぐさま、木の根元に身を隠した親まりさは、目配せで他のゆっくり達に静止をかけると、親れいむはすぐさま子供達の注意を舌で喚起し、近くの藪に誘導した。 臭い煙を吐きながら、たけのこをまじまじと見つめる姿を、藪の中からじっと見つめる子れいむと子まりさ達。 {しょれは おかーしゃんとおとーしゃんががんびゃってとってくれた とってもゆっくちできるたけのこしゃんなんだよ! ゆっくちかえしちぇね!!} そんな風に、ちいさいながらも憤りを覚えていた。 故に、その後に耳を打った本能を刺激する言葉に素直に、そして大きな声で反応してしまった。 「「「「ゆぅ? ゆっくちちちぇいっちぇね!!」」」」 「あぁ?」 その声に振り返る青年。 その目の前に、成体のゆっくりまりさが飛び出してきた。 「ゆっくりしていってね!!人間のおにいさん!」 この時のまりさは、半分以上死を覚悟している。 とにかく、人間の注意をそらすことのみに、考えを集中させていた、後ろにいる最愛の家族のために、ほんの少しでいい、注意を逸らす事が出来れば・・・! しかし、そんなまりさの想いを無視するかのように、青年は下衆な笑顔を浮かべて、まりさの背後の藪を長柄鎌で横なぎに払った。 間一髪で親れいむが子供達を体当たりで弾き飛ばしたおかげで、子供達は鎌の刃にかかる事は無かったが、れいむ自身は自慢の赤いリボンを巻き込みながら後頭部にザックリと鎌の刃の進入を許してしまっていた。 「ゆ”う”う”っう”−−!!」 「い”や”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ッッッ れ”い”ぶの”か”わ”い”い”お”り”ぼん”がぁぁぁ!!!」 「ははーッ ゆっくりじゃねえかよ こんな所で見つけるなんてツイてるぜ!」 青年はれいむが刺さったままの長柄鎌を手元に戻すと、ドンッと柄の部分の先端で地面を叩いた。 衝撃でれいむがゆっくりと鎌の刃からすべり落ちるように落下する。 と、地面に落ちる寸前で青年が軽くれいむに前蹴りを食らわせようとしたが、むなしく空を蹴った。 「れ” れ”い”む”ぅ”ぅ”ぅ” し”っ”か”り”し”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 大粒の涙をこぼしながら、まりさは一目散にれいむの元に跳ね寄り、傷口を舌で労わりはじめる。 子供達は体をぶるぶると震わしながら、呆然と眼前の光景を見やることしか出来なかった。 空振りの前蹴りでたたらを踏んだ青年は、悪態を付くと長柄鎌を少し持ち上げて、柄の先端を再び地面に向かって突き込んだ。 無防備にさらけ出されたれいむの後頭部に追撃の一撃を加えるつもりだ。 ジュブゥゥッ!! 最初の一撃で出来た傷口付近に叩きこまれた一撃は、空気を含んだようないやな音を立てて、れいむの後頭部にめり込んで行き、なおも力が加えられたため、完全に地面まで貫通してしまった。 青年はさらにひねりを加えながら、ゆっくりと柄に貫かれたれいむを持ち上げて、藪の近くで震える子供達の前に突き出した。 「で? これお父さん? お母さん?」 「や”べ”ろ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”!!! れ”い”む”を”は”な”せ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!!!!」 まりさは子供達の方に跳ねていき、庇う様に青年に向き直ると、れいむを柄からなんとか引き抜こうと、奮闘し始めた。 「ねえ どっちなの? 答えてよ?」 「「ゆ”ぅ”ぅ” お”か”ぁ”し”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ん” や”め”ち”ぇ”ぇ”ぇ” 」」 「こ”ん”な”の” ゆ”っ”く”し”で”き”な”い”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”」 「に”ん”げ”ん”し”ゃ”ん” ひ”し”ょ”い”こ”ち”ょ”し”な”い”で”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 「ああ そう お母さんかー ありがとね 教えてくれて」 そう言いながら、青年は両の手で長柄鎌を持ち直して、ひどいことをしないでと懇願した赤れいむをそのまま突き刺した。 「し”ゅ”う”!?」 母親が刺さったままの鎌の柄に、ちょうど眉間の辺りを突き刺された赤れいむは、その勢いのまま腐葉土の地面に半ばめり込んだ。 青年が慎重に引き抜くと、親子れいむはちょうど向かい合う形で串刺しになっており、その姿をみた青年は「よかったね お母さんにキスしてもらえたよー」などとおどけた調子で言い放った。 「ゆ”ぅ”ぅ”ぅ” も”う”い”や”し”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”」 「た”し”ゅ”け”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ” お”と”ーし”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ん”」 「お”か”ぁ”し”ゃ”ん”と”れ”い”む”を”た”し”ゅけ”て”あ”け”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 その場で絶望を表明するもの、父親に助けを請うもの、なおも他の家族を気遣うもの。 三者三様の反応であったが、共通しているのは、一匹もその場から動こうとしなかった事だ。 なまじ親が優秀すぎ、子供達が幼すぎたのが不運であったようで、三匹は恐怖のあまりその場から動けずにいたのだ。 このような時、とにかく分散して逃げてしまえば、この図体ばかり大きい愚鈍な人間からなら生きて逃げ延びる事が出来たかもしれないが、そのような判断が出来るほど成長してもおらず、危機的な状況に陥ったことが極端に少ない幸せだった赤ゆっくり達は、ただひたすらに恐怖を訴え、救いの手が頼れる父親から差し伸べられるのを待つしか出来なかった。 「お”ち”ひ”ち”ゃ”ん”た”ち”に”て”を”た”す”な”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!」 涙でぐちゃぐちゃになった顔面に光る二つの目には、未だ闘志が灯っていたまりさは、猛然と怒りに任せて青年の膝辺りにまで飛び上がって体当たりを敢行した。 通常のゆっくりには考えられないほどの大ジャンプであるが、地形の高低差を利用した、この優秀なまりさならではの、ひねりの効いた一撃だった。 山登りで足に疲労がたまっていた青年には、一定の効果が在り、無様にもヒザカックンの要領で、青年はバランスを崩してしまった。 「がッ! くそったれ! この腐れ饅頭がッ!!」 「おちびちゃんたち!今だぜ! ゆっくり逃げるんだぜ!!」 その一声で、我に返った赤ゆっくり達は、一斉に後ろの藪に飛び込み、そこから2方向に別れて別々に逃げようとした。 ーーーーーーが、藪と赤ゆっくり達の間に、母と姉妹の体を貫いた長柄鎌そのものが降って来た。 その衝撃に足踏みした赤ゆっくり達に、まず青年の右足が踏み込まれた。 踏み込まれた右足は、なおも地面を擦り上げ下敷きになった赤まりさをすり潰す。 次に振るわれたのはノコギリで、赤れいむの顔面をザックリと裂きながらめり込んで行き、彼女に与えた苦痛の量は、意識を失わせるのには十分なものだった。 最後に残った一匹を、青年は抱え上げると、木の枝に串刺しにし、親まりさに向き直った。 「クソッ 舐めた真似してくれたもんだな?」 青年はなおも右足を地面に擦りつけながら言うと、タバコに火を点けてこう言った。 「お前が俺に体当たりなんかしちゃうからだよ 全員殺しちゃう気なんかなかったんだぜ?」 まりさは答えない。 ただ目の前の光景が信じられなかった。 ついさっきまで生きていた最愛の家族の変わり果てた姿は、まりさから戦意を奪うには十分だった。 「ゆっ ゆ・・・」 その声は、青年のすぐ傍にある木から聞こえてきた。 弱弱しいながらも、生存を主張するその声の方向に向かって、まりさはフラフラと進みだす。 「おちびちゃん ゆっくり待っててね いま まりさが・・・・」 スコンッ! まりさの目の前で、枝に突き刺さった赤ゆっくりの体が両断された。 それから数十分後、伐採を終えたメンバーと合流した青年は何事も無かったように山を降りていった。 あのゆっくりの家族が暮らした竹林には、いま6体のゆっくりの死骸がある。 顔面から背面向けて大きな穴の開いた、物が2つ 顔面にノコギリの刃を受けた後、息があった為に、丁寧な輪切にされた物 木の枝に体を突き刺されたまま体を両断され、奇跡的に皮一枚で枝からぶら下がっている物 地面に黒いシミとしてしか名残を残さない物 そして、家族を守ろうとしてついに果たせずに終わり、その心が折れた物。 4本ほどのタバコの吸殻を体にめり込ませたまま、まりさはただただ焦点の合わない目で見続けた。 今は無い、幸せだった頃の家族の姿を。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3377.html
いろいろおかしいところがあると思うけど気にしないでね 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくちしていっちぇね!」」 俺が家に帰ると、饅頭に迎えられた。一人暮らしの我が家に何故ゆっくりがいるのか。 理由は簡単、ただ単に戸締りを忘れたからである。 最近はゆっくりの侵入被害が増えているとは聞いていたが、自分のところにはこないだろうと油断していた結果がこれだよ! ゆっくり達が家に入って来てから間もないのか、あまり家の中で動き回らなかったのか。 どちらにせよ、幸いにも家の中は荒れていなかった。 ゆっくり達の構成は母親と思われるゆっくりれいむが一匹に、赤ん坊のゆっくりれいむとまりさが一匹ずつの合計三匹だ。 「ゆっ! おにいさん! れいむたちのゆっくりぷれいすでゆっくりしていってね!」 親れいむがこちらを向きながら笑顔で言ってくる。心の広いゆっくりなのか、俺を追い出そうとはせず一緒にゆっくりしようと言ってきた。 でもここ俺の家なんだけど。いやまあ戸締りしなかった俺にも非はあるけどさ。 とりあえずその事をわからせるため、親れいむを説得してみるとしよう。 「なあれいむ。ここは俺の家なんだ、悪いけど出ていってくれないか?」 ごたごたするのは面倒なのでなるべく相手を怒らせないよう、優しく穏やかに言う。これで素直に出ていってくれたら俺としても嬉しいんだが。 だがどうやら親れいむは俺を自分の家をのっとりにきた人間だと思ったらしく、笑顔を消して眉を吊り上げた。 そして親子三匹揃ってぷくぅーっと体を膨らませた。いわゆるゆっくりの威嚇である。 「なにいってるの!? ここはれいむがみつけたかられいむのおうちだよ! ぷんぷん!」 「しょーだよ! まりしゃたちのおうちだよ!」 「ゆっくちできにゃいおにいしゃんはでていっちぇね!」 まあそうなるわな。少しとは言え期待した俺が馬鹿だった。 いくら言葉が通じるとは言え、人間とゆっくりは別の生き物だ。考え方も価値観も根本から、それこそ遺伝子レベルで違うのだ。 そんな相手にいくら人間側の常識を説こうが時間の無駄である。 「そうか、出て行く気はないんだな?」 「あたりまえでしょ! ここはれいむたちのおうちなんだよ!」 仕方ない、実力行使に移らさせてもらおう。 ぷくぅーっと膨れる三匹と目を逸らさないようにしながら、部屋に置いてある救急箱へと手を伸ばす。 どうでもいいがこの威嚇で怖がるやつがいるんだろうか。むしろ人間相手には逆効果な気もするが…。 などと考えながら、救急箱からある物を取り出した。ゆっくり達の視線も俺の右手に握られているそれへと移る。 「ゆゆっ!? おにいさん! それはなに?」 親れいむが初めて見るその物体に、恐れ半分好奇心半分という感じで尋ねてきた。 二匹の赤ゆっくりも興味を惹かれたのか、膨れるのをやめてこちらを凝視している。 「これはな、人間が爪を切るときに使う道具さ」 そう、爪切りである。刃と刃の間に爪を挟んでパチンパチンと切り取るあれ。しかも大型サイズのやつだ。 言われてもよくわからないのか、ゆっくり達は三匹とも頭上に?マークを浮かべている。まあゆっくりに爪ないしな。 とりあえず百聞は一見にしかずである。体験してみてどんなものか初めてわかるだろう。 そう思い、油断している赤ちゃんれいむを素早く左手で掴んだ。 「じゃあお前からね」 「ゆっ!?」 突然の事に戸惑う赤れいむ。そして一瞬の出来事に対処しきれなかった親れいむが事態を把握し、再び威嚇を始めた。 「ゆっ! おにいさんははやくおちびちゃんをはなしてあげてね!」 「あげちぇね!」 親れいむに続いて赤まりさもぷくぅっと膨れる。だから意味無いってそれ。 そして当の赤れいむはというと。 「ゆー! おしょりゃをとんでるみちゃいー!」 呑気に的外れな事を言っている。きゃっきゃっと笑顔を浮かべて本当に楽しそうだ。 今は左手は握っておらず、掌を器状にしてその窪みの中に赤れいむがいる状態である。 その様子を見て少し安心したのか、親れいむは少しだけ体の膨らみを小さくした。 俺が遊んであげているとでも勘違いしているのだろうか? もちろん、そんなつもりは毛頭ない。 掌の上で無邪気にはしゃいでいる赤れいむを指でがっちりと掴む。 「ゆっ!? おにーしゃん! うごけにゃいよ! ゆっくちはなしちぇにぇ!」 少し涙目になって抗議してくる赤れいむを無視し、残り二匹に見せつけるように手の位置を調節する。 「さて、じゃあ勝手に人の家に入るとどうなるか教えてあげよう」 そう言って赤れいむの側面に爪切りを押し付ける。すると、ゆっくり独特の柔軟性によって刃と刃の隙間に皮が入り込んだ。 二匹の赤ゆっくりはまだ状況を把握してないようで、よくわからなそうな表情を浮かべているが、 親れいむは何やら危険な雰囲気を感じ取ったらしく、大声で叫び始めた。 「おちびちゃん! ゆっくりしてないでにげてね! なんだかゆっくりできないきがするよ!」 その母の思いが通じたのか、身をよじろうとぐにぐにと体を動かす赤れいむ。でも俺が掴んでるから逃げられないのよ。 さっさと終わらせたいので一気に爪切りを抑えつけた。 パチン という音が部屋に響く。そして少し遅れて赤れいむの絶叫が続いた。 「ゆびゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! いぢゃいよ゛おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 赤れいむの右側面の皮が一部切り取られ、餡子が露出している。そのまま右の皮が無くなるまでパチンパチンと切り取り続けた。 しばらくすると完全に皮が無くなり、赤れいむの右側は黒一色になってしまった。 「ゆ゛っ…たしゅけちぇ…」 「しねっ! ゆっくりできないおにいさんはゆっくりしないでしんでねっ!」 親れいむが罵声を吐きながら俺の脚に体当たりしてくるが、特にダメージは無い。むしろ適度な衝撃で気持ちいいぐらいだ。 そんな事には気づかずにただひたすらぶつかってくる親れいむ。無駄な努力ご苦労さまです。 赤まりさは涙を流しながら力一杯体を膨らませて威嚇している。 親れいむのマッサージを受けながら、痛みで泣き叫ぶ赤れいむの今度は左側面に同じように爪切りをあてる。 何をされるのかわかったのか、赤れいむはさらに悲鳴を大きくした。 「いや゛っ! もういぢゃいのはいや゛だよっ! だじゅけぢぇおがーーしゃーーん!!」 「ゆっ! まっててねおちびちゃん! いまたすけてあげるからね!」 焦って体当たりの頻度を上げる親れいむ。しかし、回数を増やしたせいか助走が短くなって威力はおちている。 これじゃあ余計に意味がないじゃないか。 そんな親れいむの奮闘空しく、室内に何度目かのパチンという音が響いた。 そして右と同じように左側の皮もどんどんと切り取っていく。 「ゆびぃぃぃぃぃ!? いぢゃい゛よぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「おちびちゃああああああああん!?」 続けて赤れいむの後頭部と頬を削り取り、ピクピクと震えて気絶したところで元の場所へと餡子がこぼれないように優しく戻してやった。 親れいむは俺への体当たりをやめ、急いで赤れいむの元へ駆け寄る。 ほぼ顔面以外の皮が無くなった赤れいむの様子に顔を悲しみに歪ませたが、すぐに看病を始めた。 「おちびちゃん! たいじょうぶだよ! おかあさんがぺーろぺーろしてあげからね!」 ぺーろぺーろと赤れいむの傷口を舐める親れいむ。餡子に舌が触れるたびに赤れいむの体がビクンと反応する。 一瞬"うめっ、これめっちゃうめっ"とか言いだすんじゃないかと思ったがそんなことは無かったぜ。 余程赤れいむの事が心配らしく、ずっと泣きだしそうな顔で傷口を舐めている。 親れいむが看病に夢中になっているその隙に、俺は左手で残った赤まりさを掴んだ。 「ゆぅ!? やめちぇにぇ! まりしゃをはなしちぇにぇ!」 その声でようやく気付いたのか、親れいむがこちらを向く。 事態を把握した親れいむは再び体当たりをしてきた。 「やめてねっ! まりさをはなしてねっ!」 めんどくさくなってきたので足を振り、爪先を親れいむの顔面にめり込ませて蹴り上げる。 ゆびいっ!? というまぬけな悲鳴を上げて、親れいむは床と衝突した。 そしてくらくらとふらつきながら体を起こす。 「おきゃーーしゃーーーーん!!」 「親の心配よりも自分の心配しろよ」 指で赤まりさを固定し、右目に爪切りを押し当てる。 先程姉妹の赤れいむがされたことを思い出しているのだろう、赤まりさの震えが手に伝わってくる。 どうやら親れいむも力の差を理解したらしく、必死に俺に助けを求め始めた。 「おねがいだよっ! がわいいまりざをはなじであげでねっ!」 とりあえず無視してぐっと爪切りに力を加えて押す。すると、刃と刃の間に赤まりさの目が収まった。 ガクガクと震える赤まりさ。それを見た親れいむが涙を流して訴えかけてくる。 「やべでぇぇぇ! そのこはしんだばりざににたとっでもがわいい゛いいこなんでずぅぅぅ!!」 「何だ、お前のつがいは死んだのか?」 「ぞうだよっ! でい゛ぶはしんぐるまざーなんだよっ!」 親が一匹しかいなかったのはそう言う事だったか。どうやらつがいのゴミクズ…じゃない、まりさは死んだらしい。 確かにそれは可哀想だ。片親で子供を育てるのは大変だろう、同情は出来る。 だがそれはそれ、これはこれである。いくらシングルマザーだろうと関係ない。 そう思い、爪切りに力を加えた。 パチン 「ゆあ゛ぁぁぁぁぁぁぁ! まりしゃの゛おめめぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 ぷちゅっと可愛い音を立てて潰れるま赤まりさの右目。 爪切りの間には半分になった白玉が収まっている。 「あ゛あ゛ああぁぁ! おちびちゃんがぁぁぁ!! どぼじてこんなこどするのおぉぉぉ!?」 親れいむが涙を滝のように流しながら訴えかけてくる。 なまじ人の言葉なのが鬱陶しいが、まあこれはこういう鳴き声だと思って無視する。 いちいち動物の鳴き声を気にしていたら屠殺も出来ないのと同じだ。 次は大きく口を開けて泣き叫んでいる赤まりさの舌を爪切りへとセットする。 「ゆひっ!? も、もうやべちぇ…」 パチン 「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」 舌を切り取られ、まともに悲鳴もあげられない赤まりさ。 これでもう喋ることも出来ないだろう。厄介なおうち宣言も出来ないわけだ。 「ゅゅゅ! ゅー!」 「はっはっは、何言ってるかわかんね」 「おちびちゃんんんんんんん!!」 くりくりとした大きな目から涙を流しながら、必死に何かを言おうとする赤まりさ。だが舌がないのでまともに言葉を話す事が出来ない。 そしてそれを聞いて笑う俺と泣き崩れる親れいむ。見事な対比だ。 「ゅー! ゅー!」 「さて、これぐらいでいいか」 そしてさっきと同じように赤まりさを気絶している赤れいむの隣に優しく置いてやった。 再び急ぎ足でぽよんぽんと心配そうな顔で赤まりさへと跳ね寄ろうとする親れいむ。 今度はそんな彼女を左腕でがっちりととらえて持ち上げる。 「はなしてねっ! おちびちゃんをぺーろぺーろしてあげるんだよっ!」 親れいむがジタバタと暴れる。流石に成体ゆっくりが暴れるとなると片手で持ち上げ続けるのはちと辛い。 そこで親れいむを逆さまにして床に押さえつけた。 「ゆゆっ! てんじょうさんがゆかさんになったよ!」 わけのわからない事を言う親れいむの体を両脇から足でがっちり挟み、身動きできなくする。 そして爪切りのヤスリ部分でその底面をザリザリと削り始めた。 「ゆぎぃぃぃぃぃぃ!? でいぶのあしがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 体全体が弱点のようなゆっくりの中でも特に弱いのが底面、いわゆる足の部分らしい。 何でも、それなりに頑丈だが足を傷つけてしまったら野生では死に直結するため、本能的な恐怖があるらしい。 そこをザリザリと削り続ける。皮だけ削っているので中身が漏れることはない。 「ゆ゛っ! もうやべでねっ! ひどいこどしないでねぇぇっ!」 底面を丁寧にヤスリがけし終えた後は、そのまま体全体をヤスリで削っていく。 成体ゆっくりともなると、それなりに体が大きいだけあって中々の重労働だ。 「ゆい゛ぃぃぃぃぃぃ!? もうやべでぇぇぇ!! ごめんなざい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 頭頂部以外のヤスリがけを終え、お肌つるつるになった親れいむを赤ゆっくり達の近くに置く。 側面と後部の皮を削られた赤れいむ、右目と舌を切り取られた赤まりさ、表皮を削られた親れいむ。 気絶している赤れいむは別として、残る二匹のゆっくりはもう叫ぶ力もないのか、ゆぅゆぅとその場で声もなく泣いている。 しばらくは放っておいても大丈夫だろうと思い、俺はある物を取りに部屋を出た。 「これと…これだな」 別の部屋で目当ての物を探し出し、再び元の場所へと戻る。数分の事だったのでゆっくり達の様子も変わっていなかった。 戻って来た俺を見て親れいむと赤まりさがビクッと震える。そんなに怖がらなくてもいいだろ。 「さて、いまから君達を治療してあげよう」 そう言って表皮の半分ほどが無くなった赤れいむをひょいっと右手の中に入れる。 その動きで気絶から覚めたらしく、赤れいむは目をぱちぱちとさせた。 「ゆぅ…ここはどきょ…?」 気絶する前の記憶がないのか、やけにのんびりとした声を出す赤れいむ。 「おきゃーしゃんはどきょ…ゆびぃぃぃぃ!?」 しかし、突然悲鳴を上げた。どうやら剥き出しになっている側面の餡子にもみあげが接触して激痛をもたらしたらしい。 よほど痛いのだろう、もみあげをぴこぴこと動かしてのたうちまわる赤れいむ。 だがそんな事をすればするほどもみあげが餡子とぶつかり、更に痛みが増していく。 「いぢゃい゛ぃぃぃぃ!! だりぇかたしゅけちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「はいはい、ストップストップ」 両側のもみあげを左手の指で挟み、餡子が漏れないよう右手で固定してなんとか落ち着かせようとする。 しばらくすると痛みは治まったようで、泣き叫ぶことはしなくなった。まだゆぐゆぐと泣いてはいるが。 涙で瞳を潤している赤れいむに優しく微笑みかける。 「君は怪我をしているんだ。今かられいむを治療してあげるよ」 「ほんちょ!? おにーしゃんありがちょう!」 パァーっと顔を明るくし、赤れいむはキラキラと目を輝かせた。 どうやらその怪我の原因が目の前にいる人間だという事は完全に忘却したらしい。 「じゃあ少し痛いかもしれないけど、ゆっくり我慢してね」 「ゆっきゅりがまんしゅりゅよ!」 赤れいむを優しく地面に置く。 その時にまたもみあげが餡子に触れたらしく、ゆ゛っという声を上げたが泣き叫ぶのは我慢したらしい。感心感心。 そして俺は用意してきた物の準備をする。 先程別の部屋に取りに行った物、それはロウソクとマッチだ。 さっそくロウソクに火を灯す。それを見ていた親れいむが元気をとりもどしたらしく、赤れいむに向かって叫んだ。 「おちびちゃんにげてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ゆっくりできないきがするよぉぉぉぉ!!」 「おいおい失礼だな。俺は傷の手当てをしてあげようというのに」 「しょーだよ! おにーしゃんをわりゅくいわにゃいでにぇ!」 赤れいむは完全に俺を信じ切っているらしく、こっちの味方をしてくれた。 そんな赤れいむを左手で摘み、右手にロウソクを持つ。 「さて、始めるぞ」 「ゆっくちりかいしちゃよ!」 ちなみに赤れいむの顔面を手の内側に向けて掴んでいるため、彼女からはロウソクが見えない。 緊張しているのか、微かに震える赤れいむの後部の上にロウソクをセットする。 火のついたロウソクは次第に溶け始め、蝋を流し始めた。 そしてポタリと一滴、赤れいむの露出した餡子の上に落ちる。 「ゆぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? あじゅいよ゛おぉぉぉぉぉぉぉ!!」 露出した餡子に蝋が垂れ、膜を作っていく。こうすることで傷を塞ごうというわけだ。 大分熱いと思うが中身がはみ出すよりはマシだろう。そうしてどんどんと蝋を傷口に落としていく。 「あぢゅっ!? あぢゅいぃぃっ!! たしゅけちぇおかーーしゃーーーん!!」 「まっててねおちびちゃん! いまいくからね!」 親れいむが必死の形相でこちらに向かって跳ねた。ただし、一回だけ。 着地と同時に親れいむは突然大口を開けて叫び始めた。 「ゆぎぃぃぃぃぃぃ!? どぼじでいだいの゛おおぉぉぉぉぉ!?」 ヤスリで削られて薄くなった表皮のため、本来皮が吸収する筈の衝撃を全てダイレクトに体内に伝えていた。 これによって跳ねて動けば激痛が伴う。親れいむはその場で体をくねくねと悶え始めた。 そうしている間にも赤れいむの体に蝋がポタポタと垂れ落とされる。 蝋の殻が頑丈になるように、何度も何度も繰り返し蝋を落として固めていく。 「あ゛じゅっ!! どうちでだしゅげちぇくり゛ぇにゃいのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」 「ゆぎっ!? い、いまい゛ぐよっ! そろ゛ーりそろ゛、ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!」 跳ねる痛いという事はわかったようで、親れいむは這って移動しようとする。 しかし、それでもやはり普段では考えられないほどの痛みが走る。 ゆっくり達が元いた場所では赤まりさが相変わらずゅーゅーと言っていた。 「あ゛ぢゅっ! だしゅげでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ぞ、そろ゛ーり…ゆぎっ…そろ゛ーり…ゆびっ!?」 痛みに耐え、涙を流しながら親れいむはこちらへゆっくりゆっくりと這って来た。母の愛は強し。 でも残念、到着する頃にはもう終わっちゃった。無くなった赤れいむの両側面と後部、頬のコーティングが完成。 あとはヤスリで形を整える。 「はい、治療修了」 「ゆ゛ぅ…ゆ゛っ…」 「お、おぢびちゃ…」 肌色と白色の混ざった赤れいむとここまで頑張ってやって来た親れいむ。どちらとも息が絶え絶えである。 そんな二匹をそれぞれ手で掴み、赤まりさの近くに置いてやった。 「ゆ゛ぅぅ! きょわかっちゃよぉぉぉぉぉ!!」 「もうだいじょうぶだよ…! お、おかあさんが、いるからね!」 涙を流してすーりすーりをする親子。親れいむは少し痛そうだが、子供が戻ってきた安心感からか笑顔である。 いつもならこれで赤れいむは泣きやむのだろう。しかし、今回は何か赤れいむの方に違和感があるようだ。 最初はすりすりと笑顔で頬を親に擦りつけていたが、次第に顔に焦りが生じはじめ、最終的にはまた泣き始めてしまった。 「ゆっくち!? ゆっくち!?」 「ゆ゛っ…ど、どうしたの!? おちびちゃん!」 赤れいむは泣きながらすりすりすりすりすりと何度も何度も頬を擦らせる。尋常ではない我が子の様子に親れいむは戸惑うばかりだ。 「ゆえ゛ーーん! しゅりしゅりできにゃいよぉぉぉぉぉ!!」 頬や側面を蝋で固めたため、赤れいむは顔面と頭頂部、底面以外の感触が無くなってしまったようだ。 つまりどれだけ親れいむが頬や体にすりすりしてもそれを感じることはない。 「ゆえ゛ーーーーん! ゆえ゛ーーーん!」 「なかないでね! ぺーろぺーろ!」 すりすりは意味がないと悟ったらしく、親れいむは今度はぺろぺろと赤れいむを舐め始めた。 ずっと眺めててもいいのだが、まだやらなければならないことが残っている。 親れいむが赤れいむに気を取られている隙に俺は赤まりさを掴み上げた。 「ゅー! ゅー!」 身の危険を感じたのか、赤まりさは親に助けを求めようと口を開くが声が出ない。 親れいむも気付く気配は無く、心配そうな顔で赤れいむにぺーろぺーろをしているだけだった。 先程の赤れいむにしたのと同じように、蝋を赤まりさの潰れた右目へと垂らす。 「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」 赤まりさが大きな奇声をあげ、そこでようやく親れいむも異変に気付いたようだ。 今まで自分の後ろにいた赤まりさの姿を見失っておろおろした後、しばらくして俺の手を見た。いや、真っ先に気づけよ。 「ゅーーーーーーー!! ゅーーーーー!!」 「おちびちゃぁぁぁぁん!?」 自分の体の事も顧みず、こちらへ跳躍しようと親れいむは身を屈めた。 だが未だ泣き続ける赤れいむの声によってその場で踏みとどまる。可愛い我が子の間で板挟みとなってしまったようだ。 親れいむがおろおろしている間に目の修復は完成し、次は舌へと移る。 器用に指で舌を掴み、指にかからないよう慎重に切断された傷口へと蝋を垂らした。 「ーーーーーーーーーーッ!?」 完全に声も出せずに大きな瞳からぽろぽろと涙を流す赤まりさ。そうしているうちにも舌の処置は修了だ。 目と舌をコーティングした赤まりさを家族の近くへと帰してやる。 「ゆえ゛ーーん! しゅりしゅりしちゃいよぉぉぉぉぉ!!」 「だいじょうぶだよおちびちゃん! ほら、ぺーろぺーろ!」 「ゅーーーーーー! ゅゅーー!」 「おちびちゃん! おかあさんがついてるからね! すーりすーり!」 親れいむはこちらに背を向けながら、赤れいむと赤まりさの両方を忙しくあやしている。二匹の子供達はただ泣くしかない。 そんな子供達への対応に右往左往している親れいむの背後へとロウソクを近づけた。そして先端の炎を親れいむのリボンへ着火させる。 パチパチと燃え始めるリボン。だが親れいむはまだ気付かずに子供達をなだめている。 「ゆっ…? なんだかあついよ…?」 しばらくしてようやく違和感に気付いたのか、親れいむは顔をしかめた。 キョロキョロと辺りを見回し、そしてどういうわけか視界に入らない筈の頭上のリボンの異変に気がついたらしい。 もしかして飾りも体の一部なのだろうか。 「ゆ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!? でいぶのたいせづなおりぼんがあぁぁぁぁぁ!!」 その場でゴロゴロとのたうちまわり、親れいむは火を消そうとする。流石に火事になっては困るので用意しておいた水で鎮火した。 リボンは半分以上が無くなり、残った個所も黒く焼け焦げていた。 「ゆあ゛…ああ…おりぼんが…れいぶの…!」 絶望に顔を歪ませる親れいむ。人間なら悲惨だろうがゆっくりだと何故か滑稽に思えるな。 そして処置の終えた三匹を掴んで家の外へ出る。今回は戸締りも忘れない。 そのまま家の付近に捨てると迷惑がかかるので、近くの山の麓まで連れて行った。 「ほらよ、もう人の家に入るんじゃないぞ」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆ゛びぇっ!?」 「ゅぴっ!?」 死なない程度の力で三匹を地面に放り投げる。べちっという音の後、三匹それぞれが悲鳴を上げた。 特に皮の薄い親れいむは情けなく大声で叫ぶ。大人なんだからもう少し我慢しろよ。 これだけ痛い思いをしたならばもう二度と人には近づかないだろう。そう思って俺はその場を後にした。 背後ではいつまでも赤ゆっくり二匹の泣き声と親れいむの我が子を心配する声が響いていた。 生い茂る木々の間を、焦げたリボンを付けたゆっくりれいむがぽよんぽよんと跳ねている。 食料調達の帰りなのだろう、その頬は内側に何かを詰め込んでるように膨れていた。 ゆっくりと慎重に周囲に気を配り、れいむは巣と思われる穴の中へ入った。 「ただいま! いまかえったよ!」 「おかえりなちゃい!」 「ゅー!」 あれから一週間後、れいむ親子は生きていた。 お兄さんが去った後、親れいむは痛む体を引きずりながら何とか山の中に巣を探し出したのである。 親れいむの削られた体は何とか再生し、ほとんど元通りの分厚さとなっていた。 だが流石に焼けたリボンは元には戻らないようで、今も焦げたままである。 「きょうはおいしそうなくささんをたくさんみつけたよ! ゆっくりたべようね!」 「ゆっくちたべようにぇ!」 「ゅゅー!」 親れいむが頬から集めてきた雑草を吐き出し、赤れいむがそれに飛びついた。 「むーちゃむーちゃ、しあわしぇー♪」 嬉しそうに雑草を食べる赤ちゃんれいむ。その姿は数週間前と全く変わっていなかった。 もう一匹の子供であるまりさは既に子ゆっくりと呼べる大きさになっているのにだ。 赤れいむの体の半分以上は相変わらず白い蝋で固められている。これが全く成長していない原因だった。 表皮の大部分が蝋で硬く覆われているため、体が大きくならない。体内の餡子の量も増えないのでずっと赤ちゃんのままだ。 彼女の小さな体と幼い精神はこれからも死ぬまで変わることはないだろう。 「ゅ…ゅ…」 子まりさも雑草を咀嚼する。だがその顔は笑っておらず、むしろどこか影がある。 舌が無くなっているのだから味覚も無い。美味しくも何とも無いのである。 彼女にとって、食事とは自分の欠損を嫌でも自覚してしまう行為になってしまった。 また、草など柔らかいものはなんとか自分で咀嚼することが可能だが、少し硬い虫等になるともう飲み込むことが出来ず、 一度親れいむが噛んで柔らかくした後に口移しで与えていた。そのことも成長した子まりさの自尊心を傷付けて行く。 「ゆっくちおいちかっちゃよ!」 「ゅー…!」 食事を終えた子供達を親れいむは笑顔で見つめる。 その時、巣の外を他のゆっくりが通る気配がし、親子はシンと息をひそめた。笑顔も消え、三匹とも真剣な顔つきになる。 ざっざっという音が巣の入り口付近を通り過ぎて行く。そしてそれと同時に他のゆっくりの話し声が聞こえてきた。 「ゆ! ここにおうちがありゅよ!」 「だめだよおちびちゃん! ここにすんでいるゆっくりはぜんぜんゆっくりできないからね!」 「かかわっちゃだめだよ!」 「ゆっくちりかいちたよ!」 どうやら親ゆっくりが二匹と赤ちゃんゆっくりが一匹の家族であるらしい。おそらく家族で散歩中なのだろう。 わざと聞こえるような声で巣の前を通り過ぎて行く。 「おお、みじめみじめ!」 「おちびちゃんはあんなゆっくりできないゆっくりになっちゃだめだからね!」 「ゆっくちできないゆっくちはゆっくちしんでにぇ!」 ゲラゲラという笑い声と共に遠ざかっていくゆっくり達の気配。 それが完全に感じられなくなる頃になって、ようやく親れいむは息を吐いた。 赤れいむと子まりさはどちらも俯いて涙を流している。 「どうしちぇれいみゅたちはばかにしゃれりゅの…?」 幼く純粋な精神の赤れいむはどうして自分達がのけ者にされるのか全く分かっていない。 喋れはしないものの、思考は普通の子まりさはただゆぐゆぐと黙って泣いている。 この親子は付近のゆっくりから迫害されていた。 ずっと赤ん坊のままのゆっくり、一つ目で喋れないゆっくり、そしてリボンがボロボロのゆっくり。 そんなれいむ親子は周囲のゆっくりからゆっくりできないゆっくりとして扱われた。 故に群れにも入れてもらえず、一家だけで生きていくしかなかった。 「れいみゅ、ゆっくちしちゃいよ…」 赤れいむが俯いて呟いた時、巣の外で強い風が吹いた。ビュウビュウという音が巣の中に響く。 その強風で巣の外で細い枝が折れたのだろう、パキンという音が鳴る。 瞬間、赤れいむと子まりさは涙を流して叫び始めた。 「ゆ゛ぅぅぅぅぅぅ!? い゛ぢゃいのい゛ゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! やべちぇぇぇ!!!」 「ゅーーーー!?」 「ゆゅっ! だいじょうぶたからね! なんともないからね!」 親れいむはが泣き叫ぶ我が子達を必死でなだめる。 子供達はお兄さんの爪切りがトラウマ化し、似たような音を聴くだけでパニックに陥るようになってしまっていた。 赤れいむも一度は忘れたかのようにみえたものの、餡子の奥深くに恐怖が刻まれていたらしい。 「ほーら、すーりすーり」 「ゆ゛ぅぅぅぅ…やべちぇ…ひどいこちょしにゃいで…ゆっぐ…」 「ゅっ…ゅ…」 親れいむのすりすりで子供達はなんとか落ち着いてゆく。 このような事態はこの家族では日常茶飯事に起きていた。 これからこの親子がどうなるのかはわからない。 ただ一つ確実な事は、これから彼女達がゆっくりできることは永遠にないという事だった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/368.html
まえがきという名の弁解 ゆっくりを全然いじめてない上につまらないです 後半と前半でテンションがまるで違います ゆっくりらしい台詞はほとんど出てきません 一応ドスものです それでも構わんという心の広い人だけ読んでね 見ただけで気が触れそうな満月の夜。 人も近づかない、近づけないような森の奥深くを、ゆっくりと丸い巨体が進んでいく。 そのまん丸い巨体の頭頂部にのった巨大な黒いとんがり帽子。 ドスまりさだ。 しかし彼女はどうやら普通のドスとは様子が違った。まず髪に信頼の証の飾りがなく、 いつでも楽しそうなゆっくりと違い、一言も喋らず、やや物憂げな顔で歩みを進めている。 帽子の中にいくばくかの必需品はあるが、他のゆっくりなど一匹も入っていない。 このドスは他のゆっくりから信頼されていないのか? いや、違う。どのドスよりもこのドスは信頼されていたし、このドスもそれを自覚していた。 だからこそ、権威をふりかざすような真似に必要性を見出せず、飾りをつけようとするゆっくりをやんわりと断っていた。 帽子の中に他のゆっくりを格納しないのも、他のみんなに自分に守られるだけの存在になってほしくなかったからだ。 このドスはかなりの過酷な経験をしてきた。普通のゆっくりの時も、壮絶な生を生き抜き、ドスになれた。 ドスになり、群れを作った。その頃は飾りもつけ、帽子の中にゆっくりを入れて運んだり、遊んでやり、普通の標準的なドスだった。 いつまでも群れの幸せが続くと思っていた。しかし、それは間違いで。 やはり標準的なドスの群れのように、群れはゆっくり崩壊に近づき、やがて自分だけが生き残る。 生き残り、また群れを作った。また崩壊させた。 ある時は人間に騙され、ある時は反乱勢力が台頭し、ある時は自分たちを捕食するものに襲われ、ある時は… そうした繰り返しの中、幾度も守るべきものを奪われ、それでも崩壊しそうな理性をつなぎ留め、歯を食いしばり、目から餡子を流しながらこのドスは生きてきた。 そうしてようやく気づいた、自分がゆっくりを守るだけでは駄目なのだと。 己を己が守れるようにしてやり、自分はそれを精いっぱい手助けする。それこそが崩壊を防ぎ、群れを長続きさせる最善なのだ。 強烈な一つの個ではなく、小さな個を集めて強大な一つとする。それがこのドスのたどり着いた結論。 そのための群れの掟や、制度、システムを、実験を繰り返しながら練り上げた。 その途中で、人間という存在は自分たちと切り離された。彼らとは、出来るだけ関わらない方がいい。 そして、人間も滅多に入り込まぬ森に居住区を移した。 リスクはあった。外敵の存在、人すらあまり手をつけない自然環境。 しかし、それは普通のゆっくりに限った話。このドスになら、人間を含む、大抵の外敵は相手にならなかったし。 多少の危険な場所も、乗り越えていく強靭さがあった。 そしてその場所の下見を存分に終え、普通のゆっくり視点での対処法や生活方法を編み出し。 それを根気よく教育した。教育し、そして多少の手助けはするものの、決して全面的に支援することはなかった。 巣はあくまで自分たちで個別に作らせた。ドスを中心とした一つの巣は、ドスに対する甘えを呼ぶ。 そして自分たちで開拓させることにより、自分たちはこの環境に勝てるという意識を植え付ける。 普通のゆっくりでは無理だろうと思えるようなことだけは手伝ったが、他の事は一切手伝わなかった、指示も出さなかった。 それは普通のゆっくりなら、群れのボスとしての仕事を放棄した怠慢だと思ったかもしれない。 事実そう思ったゆっくりもおり、公然とドスを批判する者もあった。 「ドスはなんでまりさたちをてつだってくれないんだぜ!?みんなでたすけあってこそのむれだぜ!」 だがドスはそんな意見には取り合わず 「不満があるなら出て行っていいよ、ここよりゆっくり出来ると思うところがあるなら」 その言葉に憤慨し、出て行ったゆっくりも少なくない。だがドスは気にしなかった、残ってくれたものがいるのだ。 しかし、中には多くのゆっくりを言葉巧みに扇動し、少しでも大きな群れにして出ていこうとするものもいた。 そういうゆっくりだけは、秘密裏にドスは殺した。 普通のドスは群れのゆっくり、いやすべてのゆっくりの命に対して強い執着と保護心を持つものである。 まれにドゲスという命をなんとも思わないものもいる。 しかしこのドスは、あまりに多くの死に触れたため、すでにこのどちらでもない精神をもっていた。 自分はこの弱きもの達の圧倒的上位にいるのだから、管理せねばならない。 それは、動物の生息地をなるべく自然の状態で保護する研究者や、植物などを植え育て、森などを作る人間のようなそれであった。 管理者。そう、自分は群れのリーダーではない、管理者だ。 群れを崩壊に導きそうな悪い芽は潰す。そこには命を奪う快感も、罪悪感も、後悔も、何もなかった。 慈悲もなく、許容もない。 次に食べられる植物や生物などの教育を終え、ある程度生活環境が整い始めたら、外敵に対する対処を教え始めた。 いや、それは教えなどではなく、訓練であった。 狩りに出向ける個体に、ゆっくりでも協力すれば倒せる外敵に対しての戦闘方法を訓練させた。 チームワークを教え、何度も仮想敵に対する訓練を行う。 そのハードすぎる訓練に、脱落するゆっくりも少なくなかった。 その中で、本当についていけなかったものは訓練をやめさせ、別の仕事につかせることにした。 そういうゆっくりは元来こういう仕事に向いていないものなのだ。なので、子守や安全な地域の植物採取などを行わせる。 中には、ダルイ、ゆっくりできないなどの理由で訓練を放棄するものもいた。 その中で本当に疲れたふりをして訓練を抜けようとするやつは、戻らせて徹底的にしごいた後に、他の狩りゆっくりに命令を下す指揮官の教育を施す。 単純にゆっくりできないから反抗しているものは、大半は軽めの体罰をつけて戻らせた。 中にはそれに対してすら徹底的に反抗するものもおり、そういうものは群れから出てもらった。 ここでの振り分けはこうだった。まず普通に訓練を続けるゆっくり、こいつらは特に問題もない普通の狩りゆっくりになるだろう。 次に騙してサボろうとするゆっくり、こいつらは多少知恵の回る奴らだということで、生き残るためなら存分に知恵をしぼりだすだろう。 次に反抗するゆっくり、体罰を受けて戻るなら、それは自分本位ながらも多少の状況は判断できるということだ、どうにもならない状況なら自分のためにがむしゃらに生き残ろうとするだろう。 そして最後まで反抗したゆっくり、そこまで嫌ならこいつらの性根はそれまでである、頭も回らず自分の嫌なことにただ拒否するだけ。こういうのは危険にあっても状況がわからず、みじめに叫んで死ぬだけだ。 そうしてゆっくりをふるい分け、最終的な訓練卒業として外敵との実戦に移ってもらう。ある数の部隊にわけ、一つずつこれを行った。 この時、ドスは後ろでその光景を眺めていた。 戦闘が始まり、ある部隊は快勝を続けた。ある部隊は窮地におちいる。その中で、自分たちで奮起し、何とか勝利をおさめる部隊もあった。ある部隊は後ろで見ているドスに助けを求めた。 だがドスはどれだけ助けを請われようと、どれだけ惨たらしく群れの仲間が目の前で殺されようと、決して手を出さなかった。 ある部隊はドスが絶対に自分を助けてくれないだろうことに途中で気づき、絶望的ながら辛くも勝利をおさめた。ある部隊は最後までドスに助けを求めながら全滅した。 実戦が終わると、ドスは部隊の成績によって役割を与えた。前線で狩りをする部隊、狩りをしながらその部隊を護衛する部隊、居住区に残り守る部隊。 それはあたかも人間の軍隊のようであった。 中には教育や訓練をドスが任せるゆっくりもいた。いつまでも自分がやるわけにはいかないのだ。 そうして狩りの教育を終え、食糧が潤沢になってきたところで、食糧制度に手をつけた。 本来ゆっくりは冬以外に食べ物をため込むことはない、取ったら取っただけ、食べられるだけ食べる。 そして普通のドスの群れはそういう事態を憂い、食糧を一か所に集め、管理し、食べない分を非常用として保管する。 だが、それが一部のゆっくりの不満や懐疑を招き、結局反発され、群れが崩壊した例も少なくない。 では、どうするか。ドスはこれに大いに悩んだ、何せ食糧管理は反発を招く恐れもあるが、食料供給の安定した維持にこれ以上の手段はない。 そこでドスは食糧管理の仕事をわけることした。 つまり、食糧を集めるゆっくり達、集められた食糧の量を管理するゆっくり達、その食料の量を聞き分配するゆっくり達。 これによって相互をある種の緊張状態にし、互いに監視させ、一部の独走を阻止しようとしたのだ。 すなわち、食糧調達部隊は、その食料を献上しなければ、食糧管理部隊にすぐさま疑われる。 次に食糧管理部隊は、その食料を正確に管理しなければ、分配部隊に疑われる。 そして分配部隊は、それを正確に分配しなければ、たちまち分配される皆から疑われる。 多少の歪みは出るかもしれないが、致命的な崩壊には繋がりにくいとして、ドスはこの方法を選んだ。 そして、管理、分配の仕事はなるべく頭の良く、公平性があって信頼されているゆっくりでなければならない。 故にこの仕事につくゆっくりを、ドスは皆の推薦による選出と投票で選ぶことにし、もし選ばれたゆっくりに不満があるならば、一定数の投票で辞めさせられることにした。 そしてさらに、一定のサイクルで浄化するために、ある期限ごとに管理分配の仕事につくゆっくりを全員一旦やめさせ、もう一度選びなおす制度も導入した。 それはゆっくりによって形成された、未熟な政治制度のようなものであった。 ドスはゆっくりと色んな制度を導入し、根気よく教え込んだ。 そしてドスの手を借りずにそれが運営されていくようになると、後は全てを任せて手を引いた。 群れの運営がスムーズになり始めてから、遠くの地からドスが直接頼み込み、ゆうかりんを連れてきて農耕制度を作った。 さらに月日が流れ、世代交代にさしかかる頃には、教育制度を狩りの教育や、管理分配の教育、農耕の教育などにわけ、色んな仕事を選べるようにした。 すでに自分の手をほぼ離れて歩いて行く群れをゆっくり眺めながら、ドスは満足していた。 ようやく、自分の理想郷を作ることが出来た、と。ゆっくりがゆっくり暮らしていける理想郷を……。 そこはまさにゆっくり郷とも呼べるものであった。 だが最後に一つだけ、ドスは群れの中で自分だけが行う仕事を持っていた。 すなわち、罪を犯したゆっくりに対する、裁きと罰の執行を……。 夜の下を行くドスが、ある巣の前で止まった。 目的地だ。 その巣の中から、悲鳴のような声と耳が腐るような嬌声が聞こえてきている。 ドスがため息をつく、が、それには何の感情もこめられていなかった。 そしてゆっくりと、気づかれないように中を覗き込んだ。 中には一匹のゆっくりまりさとゆっくりアリス、そしてゆっくりれいむの親子がいた。 だがれいむ親子の様子はおかしい、親と比較的大きいれいむは動けないように痛めつけられ。 まだ交尾に耐えられないと思われる小さなれいむは、アリスによる一方的な性的暴行を受けていた。 「いやあああああああやめじぇええええええいじゃいよおおおお!!!」 「はぁっ!はぁっ!いやぁぁぁぁんかわいいいぃぃやっぱり犯すならちっちゃいゆっくりだわぁぁぁ!!」 親や他のれいむは涙を流しながら「やめてぇ…」「こどもだけはたすけて…」などと弱々しい声で呻いている。 「ゆっへへへ、やっぱりアリスのこうびをつまみにたべるのはさいこうだぜ!!」 そしてまりさはその隙に巣にあった食料をむーしゃむーしゃと食べていた。 押し込み強盗である。 実はこの二匹、最近この郷では有名な犯罪ゆっくりであり、すでに二件の被害報告が届けられている。 どの一家も無残に惨殺され、巣を荒らされていた。 さっき言ったように、ドスはゆっくりに対する裁きを行ってはいたが、それは普通のゆっくりには手に負えないと思われるものだけであった。 このドスの郷には、警察のような役割をもつゆっくりも、裁判もちゃんと存在する。 だがそれでは立ち行かないものがある……。法の手をすり抜け、悪事を続けるゆっくりは後を絶たなかった。 そんなゆっくりを、ドスは心底憎んだ。自分の作ったこの郷を、荒らすものだけは絶対に許さなかった。 ギリギリまで事件解決を見守っていたが、一向にゆっくり郷の警察ゆっくりでは犯人が捕まりそうな様子はない。 長く生きた知恵か、この二匹が次にどこで犯行をするかを予測したドスは、自分だけで制裁を加えるために動いた。 ドスは中の様子を確認した後、そこに向かって「出て来い」とだけ、ただ一言だけ言った。 それだけで十分だった。 色の変わらない体表が本当に青くなるんじゃないかというような顔をして出てきた二匹は、 ドスにすがりつき、必死に言い訳を始め、媚びへつらった。 「ゆるしてほしいんだぜ!まりさたちのいえにはたべものがたりなかったんだぜ!」 「そうなのよ!ついでにすっきりできるゆっくりもたりなかったわ!」 「ゆっ!これはきっとかんりふやぶんぱいふのやつらがわるいんだぜ!」 「そうよ!そうよ!それにどすといえどもむれのゆっくりをころしたりはしないわよね?」 「そうだぜまりさたちはなかまのはずだぜ!ゆるすべきなんだぜ!」 それは聴くに堪えない理屈だったが、ドスはしゃべり終えるまでじっと押し黙ったままであった。 そして何の反応も返さないドスに二人が不思議がっていると、ドスがようやく口を開いた。 「死ね」 そのまま開いた口から溢れる光が、二匹の見た最後の光景だった。 その二匹だけを焼き尽くすために威力を調節したドスパークの照射が終わると、ドスは巣の中に話しかけた。 「大丈夫、れいむ?動ける?」 「ゆぅ…なんとかうごけるよ…」 弱々しいながらも返事が返ってきて、しばらくしてから親れいむの三匹の子供がよろよろと這い出てきた。 「今から病院の方に行って、治療を受けるといいよ。まだ開けとくように言っておいたし、警察もそこに待機させてあるから、事情を説明して」 ドスがそう言うと、口の中に弱った子供を入れているのか、親れいむ達はうなずいてずりずりと這って行った。 れいむ達が行ってから、ドスは大きくため息をついた。 あきれしか出てこない。悪事を犯して、悪びれもせず許しを乞うあの二人。 驚くことにあれが普通のゆっくりなのだ。 わかっている、この郷のゆっくりは、もはや普通ではない。 人間のまねごとのようなものだが、決まり事を順守して生活を営むなど、昔では考えられなかった。 いや、今でも普通のゆっくりには考えられないだろう……。 何で自分たちはこうなんだ。なぜゆっくりは……。 知らず、月を眺める。 最近月を眺めていると、なんだか体の底から力が湧いてくるのだ。 これを活力にして、明日からも頑張ろう。 そう思っていた矢先である。 「はぁい」 それは、何もない空間を割いて、ぬるりと現れた。 妖しく光る髪と、鮮やかな紫の衣装艶めかしく。 「こんばんわ」 絡みつくような声を発し、出てきた裂け目に腰かけていた。 ドスは一瞬で敵だと判断した、それも自分でしか対応できないような。 「あんた誰だ?」 警戒しか含まない問いに、女は目をにこやかに細めると、 「やだ怖い」 口も吊り上げ、 「怖いから」 細めた目を開いて、 「私も怖くなっちゃおうかしら」 その場の何もかもが一変する。 肌を刺した空気で、一瞬で支配された場の雰囲気で、勝てない相手だとわかった。 ドスはため息をついた。このような相手がいつか来ることは、前々から何となくわかっていた。 自分が作った郷は、異常だ。考えの回るこのドスの目は、他の視点から自分達を見ることもできた。 こんなものは、人間からしたら恐怖でしかない。 わかっていた、でもやらずにはおれなかった。なぜ人間に許されることが、ゆっくりには許されないのか。 だから、それでも。 「ここを……潰しにきた?」 ほぼ諦観と、疑問を少しだけ含ませて問う。 人間の上位の存在、人を守るもの、調停者。この郷に対する自分のようなものが人間にも存在すること、それは容易に想像できる。 それが目の前のこの女なのだろう。 女は少しだけ意外そうな顔をすると、すぐに首を横にふった。 「まさか」 そして片手に持った扇子で口を隠し、 「でも、予想以上。そんな考えもできるのね」 そこから出る感情を見せないように呟いた。 「なら何を?」 今度は疑問だけで問うと、 「話をしに」 そう言って、今度は優しく微笑んだ。少し、安心できる笑顔だった。 女は隙間から地面に降り立つと、ドスと向かい合うように座り込む。 「そうね、じゃあまず最初、あなたはゆっくりって何だと思う?」 ようやく話し合いの場が整って、女は最初にそう問うた。 「……」 ドスは難しいと感じた。自分の存在は何だと問われているのだ、何と答えるか……。 「まぁ、難しいわよね。逆の立場なら私も言葉を濁す……一般的な定義を私が言いますわ」 女は返答を待たずつらつらと、 「そうね、饅頭の体を持ち、人語を操り、畑や民家を荒らす頭の悪い汚い野生生物……これが一般的なゆっくり」 挑発するようなその物言いだが、ドスは何も言い返さなかった。 「あら、怒らないのね」 「大方その通りではあるよ」 そう、と女は呟き、 「でも、それは悪いことではないわ。むしろ野生生物の本懐。これより傲慢で、危険で、自分本位な生き物はたくさんいるわ。人間だってそう」 そして、 「普通のゆっくりなら、先の発言には醜く憤慨すべき。それがゆっくりの在り方」 ドスは驚いて女を見つめた。この女は人間に嫌われるゆっくりの性質を何と言った? 「そう在るべきと言いました。多少の程度はあれど、ゆっくりがゆっくりらしく生きること、それこそがゆっくりの在るべき理由」 謳うように続ける、 「憎まれることも、慈しまれることも、虐められることも、世話されることも、全てがこの世界におけるゆっくりの在り方」 理解できない、いや、理解したくない。この女が真顔で今述べていること、それは。 「じゃあ、いつもどこかで繰り返されている、ゆっくりの悲劇……その全てが」 「そう、ゆっくりの生きる理由」 そのためにゆっくりは生きている。 「人間の……ために……」 女はふう、と息をつくと、 「ゆっくりの理由……ここまではいいかしら?」 衝撃から、ドスはまだ立ち直れなかった。 自分たちは言うなれば、人間のおもちゃとして生まれてきたのだ。それが自分たちの本来の在り方なのだと。 「あなた達はおよそ自然環境のどの役割も担っていないのですもの、そうとしか言えないわ……まぁ、これ以上ゆっくりについて議論する気はございません」 女はまだ話を続ける、 「そして次、次はあなた。あなたは果たして……」 あなたは、ゆっくり? 「!?」 問われた。自分はゆっくりか?当然だ、でなければ自分はなんなんだ。 「当たり前だ!」 声が荒れる。 「……あなた、自分を何て呼ぶ?」 女は少し息をついて、 「私……」 「その呼び方はいつから?なぜ?」 「いつからかは覚えていない。何故かは……この方が、らしいと思った」 「普通のゆっくりは、絶対に自分をそんな呼び方はしない」 心にザクリと矢が撃たれた、 「普通のゆっくりは、そんな言葉づかいもしない」 二発目。 「あなた、ゆっくり出来てる?」 「出来てるよ。毎日、郷の管理で、みんなの生活を見守るのが私のゆっくりだ」 「それはゆっくりじゃないわね」 「違う!それが……!」 「他人のための行為はゆっくりではない、ゆっくりの価値観に照らし合わせるならね」 三発目。 「御希望なら、この他にも理由を計上してあげましょうか?子供でも指摘できるものがまだまだあるわ」 荒々しく首を振った。三発。たった三発で、ドスの脳は理解した。 「……私を否定して、何が楽しいの?」 問いは、悲しみと怒り。 「……そうねぇ。あなたはゆっくりの在り方を外れている、ここまではいい?じゃあ次は、人間とゆっくり以外のもう一つの種族の話」 答えず、女は話を進める。 「妖怪の話」 「あなたは妖怪を知ってる?」 「……とても強い生き物。ゆっくりよりも、人間よりも」 投げやり気味にドスは答えた。 「正解。じゃあ、妖怪の種類。そこまではあなたも知らないわよね」 「……?」 女は師が生徒に教えを説くように話し始めた。 「まず、私は妖怪。わかるわね?」 「へぇ……」 ここに来て初めて女の正体が明かされたが、別段驚かなかった。 「私は同族もない、どうやって生まれたかも秘密のワンオフ妖怪よ。こういうのはそれほど数もいないの、さびしいわ」 女は泣き真似の仕草をしたが、ドスは冷やかな視線でそれを見ていた。 「いやん、ツッコミが欲しかったのに……まぁ、気を取り直して次」 女は小芝居をやめると話を再開する。 「次はメジャーな種族に属する妖怪。鬼、天狗、河童、吸血鬼……こういうのは結構な同族がいて、蛮行が広く知られているからカテゴライズされている」 「名前だけは何となく聞いたことあるよ。湖の館……妖怪の山……」 「大正解。ゆっくりにまで知れ渡っているなんて、中々……いや、あなただけでしょうねきっと」 「?」 「なんでもないわ、続けましょ」 女はコホンと小さな咳をすると、 「次は妖獣、これは強大な力を持った獣が、それ故にその生き物の枠を離れて妖怪になってしまったもの」 「動物が?」 「私の式達もこれね、竹林の兎達もそう。これが幻想郷には中々多い……自然が残ったままだからかしら」 ここで女は教鞭を振るう笑顔から、真顔に戻った。 「そう、人間を超える力を持って、その生物の寿命を超えた長い時間を生き、ついにはその定義から弾かれる……」 ドスも気づいた。いや、それはかつて、ドスだったもの。 「まるであなたのことね」 「違う……」 否定する声は、聞き取りがたいくらいにか細い。 「あなたはもう普通の人間より遥かに強いわね」 「違う……」 「あなたは今で何年生きた?普通のゆっくりの寿命は平均五年、巨大種なら十年ってとこかしら」 女は辺りを見回し、 「この郷、ここまでするのに少なくとも十年以上はいるわよね」 「違う……」 「定義から外れる、これはさっき散々説明したから言うまでもないわね」 「違う!!」 違う、違う。私は、私は…… 「あなたは、妖怪よ」 「正確にはゆっくりと妖怪の境界線……その上に今のあなたはいるわ」 その言葉に、うつむいていたドスは少しだけ期待をこめて見上げた。 「でも、その境界がゆっくりに傾くことは決してない」 絶望を、女は吐く。 「これからあなたは、ゆっくりと妖怪になっていく……いや、今でも弱い妖怪程度ならいい勝負をするでしょうね」 「……」 妖怪は応えなかった。もう何も応える気もなかった。 「ゆっくりが、この幻想郷に誕生してもう何年経ったのかしら……そろそろだとは思っていたけれど、私が見つけたのはあなたが初めてよ」 女は、満月の空を見上げ、 「永琳に改造されたわけでもなく、自然に生まれ、自然に生きてきたあなた。ここまでの生、私は敬意を表します」 そして、再びその妖怪へ視線を向けると、 「そして、幻想郷はあなたを受け入れます」 「……そう」 妖怪も女を見つめ、ただそれだけを呟いた。 女が軽く扇子を振ると、空間の隙間は再び開いた。ゆったりと浮き上がりその中に下半身を入れる。 「では、ごきげんよう。これからあなたがどんな選択をして、どう生きるのか。少しだけ楽しみにしてますわ」 上半身だけを出してそう言った後、女は隙間に消え、何事もなかったかのように閉じて元に戻った。 後には月を見つめる妖怪だけが残された。 それから、ゆっくりの郷からドスは姿を消した。 ゆっくり達は思った、ドスがついにすべてを自分たちに任せてくれたのだ、と。 ドスが、自分たちで何かが成せるようになると、必ず身を引いたのをゆっくり達は世代が代わっても覚えていた。 その郷の歴史に、偉大なるドスの名が刻まれ。 後にはゆっくりと続いていくだろう、理想郷だけが残された。 あとがきという名の言い訳 今回はゆっくりいじめ作品としては駄作極まりないと思われる本作を読んでいただきありがとうございます。 ゆっくりいじめに憧れていました。色んな作品を読み、深く感銘を受けました。 自分もこんな作品を書いてみたい、彼の憎き饅頭を虐め抜きたい、そう強く願い、ようやく実行に移った次第ではありますが 出来上がったのはこんなものでした。皆さんのような、加虐心に油をドンドコ注ぐゆっくり語や、醜い物言い、くさった饅頭心。 何もかも自分の実力では描けない、難しいものでした。才能のなさが恥ずかしいです。修行の足りなさを実感しました。 まあ自虐はこれまでにして、本編の補足です。 今回のゆっくりの生活制度はまったく人間のそれのパクリです、そして世界はこんなに簡単ではありません。多分。 本当はドスに反発して「ゆ゙っぐり゙でぎな゙い゙い゙い゙い゙!!」と叫ぶゆっくりの描写をふんだんに取り入れてみたかったのですが、どうにも力不足でした。 後半の会話にいたっては雰囲気がまったく前半と違ってしまい申し訳ないです。これではただの東方SSです。本当に(ry それにしても、ドスはこれほどまでにならなくても、人間を殺せる時点で十分妖怪だと僕は思いました。 最後に、こんな作品とやたら長い言い訳を最後まで読んでくれた方にもう一度お礼を。また修行して今度は上手く書けるように目指したいです。それでは。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2835.html
ほんのりペニマム設定あります ゆっくりの宿 バチバチと大粒の雫が地面を跳ねる。真っ黒な雲に覆われた空からは、まるでバケツを返したような雨がザーザーと降ってくる。 季節はずれの通り雨。いっそのこと濡れて帰ろうかとも思ったが、いささか水遊びをするには寒すぎる。 貼り付いた前髪を絞りながら空を睨んでいると、ふいに足元より声が響いた。 「ゆっくりしていってね!!」 雨音にも負けないよく通る声、挨拶をくれたのはゆっくりまりさ。帽子のつばからは水滴がしたたっている。 「おにいさん、ここじゃゆっくりできないでしょ? まりさたちのやどで ゆっくりしていってね!!」 そう言ったかと思うと裾を咥えて引っ張りはじめる、泥がはねて汚い。 たまらず反射的に足を引く。一瞬ぐにんっと伸びたかと思うと、そのままの勢いでまりさは濡れた地面に突っ伏した。 何やらブクブクとヌタ場の中で蟹のように泡を立てている、新しい遊びだろうか。 「ゆ、ゆえええええええええ!!! なんであじ ひっばるのおおおおお!!!??」 そうして起き上がったかと思うとわんわんと泣きだす。その顔は泥やら涙やらが入り混じって凄いことになっている。 「せっかく、まりさが、おにいさんを、しょうたい、しようと、してる、のにい!!!」 グスグスと嗚咽交じりに訴えてくる。途切れ途切れの言葉を纏めるとこうだ。 何でもこのまりさは宿屋を経営しているらしく、この雨の中立ち尽くす俺を見かねて声を掛けて来たらしい。 ゆっくりの宿屋というものにいささか興味はあったものの、この雨の中をこれ以上歩き回るのは勘弁願いたい。 そんなわけでその旨をまりさに伝える。だが彼女は依然として食い下がる。 「ゆぐっ!? ごはんもだすよ!! おもてなしするよ!! ゆっくりしていってよー!!」 「おきゃくさんつれていかないと れいむにおごられるううぅぅぅ!!」 どうやら俺に声を掛けたのは親切心からでなく、ただの客引きだったらしい。 そんなこと言われると殊更行く気が失せるのだが、雨上がりまでわめかれても面倒だ。 仕方がないので、まりさに案内してくれるよう頼むことにした。 「ゆゆ!! もうおにいさんたら つんでれなんだから!! ほんとうはまりさのおうちで ゆっくりしたかったんでしょう?」 途端、手を返したようにニヤニヤと薄ら笑いを浮かべるまりさ。ちょっとうざい。 そうして俺とまりさは林を奥へと進んでいった。 「ついたよ!! まりさのおやどにようこそ!!」 宿と呼ばれたそこは何の変哲も無い洞窟であった。 特にこれといった装飾もなく、剥き出しの岩がボコボコと殺風景である。 私が唖然としていると奥のほうから数匹のゆっくり達がぽよぽよと跳ねよってきた。 「いらっしゃいませ!! おやどのおかみのれいむだよ!! ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 こいつ等がここの従業員らしい。 「ゆ!? まりさ、どろどろしてばっちいよ!! どろをおとしてからはいってきてね!!」 「おとうさん、ゆっくりしないで はやくおかおをあらってきてね!!」 「ゆぎぃ!!? まりざがんばっでるのにどうじでぞんなごどいうのおおぉぉぉ!!!??」 「どろをとばさないでね!! いいからはやくあらってきてね!!」 自称女将のれいむの剣幕に押され、まりさはすごすごと出口へ向かっていった。 しかし先程の会話を聞いているとどうやらこのゆっくり達は家族らしい。この女将れいむが母親だろうか。 「しつれいしました!! おきゃくさまはきにせずゆっくりしてね!!」 まりさを見送ったれいむがこちらに向き直る。 「きゅうけいと しゅくはくがあるけど、おにいさんはどうするの?」 よく解からないが取り合えず雨が止んだら出て行くと答えた。 「ゆっくりわかったよ!! おだいはいっちまんえんでいいよ!!」 高い。生憎と私の懐には黄色いお札様はいらっしゃらない。 あからさまに渋い顔をすると、れいむは察したのか言葉を続けた。 「いっちまんえんがないなら そこにあるみかんさんでもいいよ!!」 そう言って、れいむは私の籠を見つめながらダラダラと涎を垂らす。 これは先程友人の家を訪ねた際、たくさん成ったからと貰ってきたものだ。 恐らくあのまりさもこのミカンに釣られて来たのだろう。まぁかなりあるし少しくらいなら構わない。 そこで私は、持て成しに満足できたらミカンを分け与えると約束した。 「こうしょうせいりつだよ!! それじゃおちびちゃん、おきゃくさまをおへやまであんないしてね!!」 「ゆっくりわかったよ!! おにいさん、おにもつはこぶからゆっくりわたしてね!!」 そうして女将より一回り小さなれいむが足元まで跳ねてくる。 流石にゆっくりには重いだろうと荷物運びは断ったのだが俄然として聞かない。 「れいむつよいこだからだいじょうぶだもん!! わかったらおにもつわたしてね!!」 ぷんぷんと膨らんで抗議の声をあげる。仕方がないので、俺はミカンの籠を頭の上に乗せてやった。 「ゆべべっ!!? ゆぐ、ゆっぐりはごぶよ・・・」 ぶちゅりと口から空気と餡子を吹き出す。何やら涙目になっているが平気と言うからには平気なのだろう。 ズリズリとナメクジの様に這い進むれいむに連れ歩く。しばらくすると開けた空間に出た。 そこは一面に枯葉が敷き詰められており、至る所にコケシやらダルマやらと統一なく様々なものが置かれていた。 さながら子供の秘密基地といったところだろうか。そう感心する私の傍らでは、ぜえぜえとれいむが虫の息になっていた。 「お、おにいさん・・・れいむ、ゆっくりがんばったよ・・・」 荒い息をつくれいむに、私はありがとうと礼を告げた。するとれいむはにこりと笑った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 顎をはって自慢げな顔をしたまま硬直する。まだ何かあるのだろうか? 「・・・れいむゆっくりがんばったよ!! ね!! ね!?」 ああ、そうか。チップが欲しいのか。 とはいえゆっくりの欲しがる物等わからない。取り合えず髪の毛に鼻クソを付けてみた。 「ゆぎゃあああああ!!!?? なにずるのおおおおおお!!!!!」 お気に召さなかったらしい。涙目になりながらズリズリと頭を岩肌に擦り付けている。 そんなれいむを見ているとある物を見つめていることに気付く。 俺はミカンを1つ籠から取り出し、おもむろに皮を剥く。 そうしてその手をれいむの方へ伸ばす、れいむはだらしなく涎を垂らしている。 「ゆあーーーーーぶびぃ!!!??」 絞ったミカンの皮からは勢いよく汁が飛び出し、それは無防備なれいむの顔面に降り注いだ。 「いぎゃああああ!!! れいむのおめめがああああああ!!! ゆっぐりできないいいいい・・・・」 そのままれいむは元来た道を戻っていった。今度はお気に召したようでなによりだ。 そうしてやることも無いので上着の水を切って暇を持て余すこと数分、またもゆっくり達がぽよぽよとやって来た。 ただ今度は皆が皆総じてその頬を大きく膨らませている。その姿はまるでリスか何かのようである。 何事かと見ていると、そのうちの1匹が大きな葉っぱをゆんしょゆんしょと地面に広げていく。芭蕉か何かだろうか。 「おにいさん、これからごはんをよういするよ!! ゆっくりたべていってね!!」 そう言うや否やぺっぺと口から何かを吐き出していく。 まさか食事まで出てくるとは思っていなかった。丁度小腹もすいていたので幸いである。 だが眼前に用意されたメニューはドングリや芋虫など、残念ながら人間の口にするような代物ではなかった。 中には食べられそうなキノコも見受けられたが、生、それも唾液まみれでベタベタと糸を引くそれを食べる気にはなれなかった。 仕方がないので出された食事を断り、またもミカンを食べて腹を膨らませることにした。 「ゆぅ・・・それじゃあこのごはんは れいむたちがたべるね!! ゆっくりいただきます!!」 「「「いただきます!!」」」 もう運ぶの面倒なのかこの場で食事を始めるゆっくり達。だがその様子はどこかおかしい。 「むーしゃ、むーしゃ・・・ゆううぅぅぅぅ!! こんなのおいしくないよ!!」 「おかーさん、れいむもあまあまな みかんさんたべたいよ!!」 黙々と食事をしていた一家だが、ついには子ゆっくり達が次々と不満をもらしはじめる。 部屋中に満ちるミカンの甘くも爽やかな香り、それはゆっくりを誘惑するには充分な威力を発揮していた。 刺さるような視線に耐えかね、俺はミカンを分け与えようかと声を掛けた、しかし。 「おにいさん、ありがびゃあぁ!!?」 子ゆっくりに与えられたのはミカンではなく強烈な体当たりであった。 「「「いぎなりなにずるのおおおおお!!!??」」」 「うるさいよ!! おきゃくさまのものを ほしがるなんてゆっくりしてないよ!! いじきたないちびちゃんは はんせいしてね!!」 「「「ゆびゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」」」 ぼむぼむと体当たりを繰り返す女将れいむ。子ゆっくりの涙も謝罪の声も関係なしだ。 何もここまでしなくても良いと思うのだが、彼女には彼女なりのプロ意識が在るのかもしれない。 声を掛けるのもはばかれたので、俺は静かにミカンを頬張ることにした。 「ゆううううう・・・・・」 腹が膨れる頃、ぐったりした子ゆっくり達を尻目に女将れいむは何やら考えこんでいた。 「おしょくじも おきにめさなかったし、これじゃあれいむ おかみしっかくだよ!!」 どうやら俺のことを気にしているらしい。 別にこちらとしては構わないのだが、どうもこのれいむのプライドがそれを許さないらしい。 「そうだよ!! おにいさんにはとくべつ いあんさーびすをしちゃうよ!! ゆっくりまっていてね!!」 何か思いついたのか女将れいむはそう告げると、倒れている子ゆっくり達を蹴っ飛ばし連れ立って奥へ引っ込んでいった。 残された俺はやることもなく、手持ち無沙汰とばかりにミカンの皮を剥くのであった。 やがて指先が黄色くなる頃、またまたゆっくり達はやって来た。 「ごめんね、おにいさん。おめかししてたら おそくなっちゃったよ!!」 「「「かわいくってごめんねー!!!」」」 ゆっくり達はそれぞれ頭に花や落ち葉をつけていた。お洒落のつもりだろうか。 「これかられいむの せくしーなしょうが はじまるよ!! ゆっくりみていってね!!」 「「「ゆゆゆ~ん、ゆんゆゆ~~♪」」」 そうして子ゆっくり達は歌いはじめる。お世辞にも上手いと思えない歌は洞窟内でわんわんと響く。 四方八方から襲い掛かってくる雑音。そんな中、女将れいむは岩の上に飛び乗った。 「ゆっふ~ん、ちょっとだけよ~♪」 そうして甘い声を出しながら体をくねらせ始める。一体なんの真似だろう。 「こういうところはじめて? しこっても、い・い・の・よ☆」 顔をポッと染めながら、下腹部を突き出してくる。どうやらストリップのつもりらしい。 生憎と俺は饅頭に欲情する性癖は持ち会わせていない。とは言え、折角ここまでしてくれているのだ。 無下に断るのも何か気が引け、結局は見続ける羽目となってしまった。 「そんなにみつめられるとれいむ、はずかしいところからくろみつでちゃう~♪」 一見ノリノリな様に見えるが、よくよく考えると家族の前でこんなことを行うのは並大抵のことではない。 もしかしたらあの仮面の下では餡子が羞恥で煮え返っているのかもしれない。 ここまでされたらと、チップ代わりのミカンを手に取る。だがそこであることに気付いた。 これが人間ならパンツにでも挟むところだが、ゆっくりはそんなもの着けていない。 かといってステージに投げ込んで邪魔をするのも申し訳ない。 そう考えていると、れいむのアゴのあたりから何やら液体が垂れているのが目に留まった。 どうも穴が開いていて何かが漏れているらしい。ポケットのようなものだろうか? 何はともあれ御あつらえ向きである。俺は右手一杯にミカンを掴み、それを勢い良く手首まで突っ込んだ。 「ゆっっっばあああああああああああ!!!!!???」 「「「おかああああざああああああああん!!!??」」」 女将れいむは大きな声をあげ仰向けに倒れた。その体はビクビクと震えている。 引き抜いた右手は黒くベタベタと汚れていた。しかし、涙を流し泡まで吹いて喜ぶれいむを見るとやった甲斐のあるというものだ。 そうこうしていると、騒がしい洞窟内とは対照的に外が静かなことに気付いた。 出口から顔を出すと雨はすっかり上がっていた。俺は父まりさに声を掛けた。 「ゆ? もうかえるの? それじゃゆっくり おだいをだしてね!!」 貴重な体験ができたしそれなりに面白かったので、俺は籠ごと残りのミカンを与えることにした。 「まいどありがとう!! ゆっくりまたきてね!!」 そうして俺はゆっくりの宿を後にした。 「おかあさん、しっかりしてね?」 「げんきだしてね!! ゆっくりしてね!!」 「ゆぐううぅぅぅ・・・」 子ゆっくり達の輪の中心で女将ゆっくりはぐったりと伸びていた。その下腹部はボコボコと不自然に膨らんでいる。 「れいむ、おにいさんにミカンいっぱいもらったよ!! これをたべてゆっくりしようね!!」 そう言って父まりさは勢い良く籠の中身をぶちまけた。鮮やかな橙色が宙を舞う。 「ゆゆー!! ゆっくりいただきます!!」 「「「ゆっくりいただきま・・・す?」」」 地面に散らばった大量のミカン。しかしそれは全て皮だけであった。 「「「どおいうごどおおおおおお!!!??」」」 洞窟の中では、いつまでもゆっくり達の悲鳴が響き続けたのであった。 澄み渡った空は雲一つ無く、先程までの天気がまるで嘘のようであった。 黄色くなった男の頭上には、同じように星々が黄色い光を暖かく放っていた。 終わり 作者・ムクドリ( ゚ω゚ )の人 このSSに感想を付ける